高度の専門的な能力を有する人材として一定の基準を満たし、日本の学術研究又は経済の発展に寄与することが認められる外国人の方は、通常の就労ビザではなく、高度専門職(高度人材ポイント制)の在留資格を取得することができます。
そこで、今回は、高度専門職(高度人材ポイント制)ビザについて考えていきたいと思います。
高度専門職の在留資格の取得を検討している方の参考になれば幸いです。
高度専門職(高度人材ポイント制)とは
高度専門職の在留資格は、平成24年5月7日から高度外国人材の受け入れを促進することを目的に創設されました。
そのため高度専門職の在留資格を取得するためには、一定のポイントを満たす必要があります。
このポイントを一定以上満たしている外国人の方に対して、出入国在留管理上の優遇措置を与えられます。
ちなみに、平成21年5月29日の高度人材受入推進会議報告書では、高度外国人材について
「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」
とされています。
ポイント評価の仕組みについて
高度専門職の在留資格を取得するためには、上述した高度人材ポイント制を利用して、70点以上あるということを証明していく必要があります。
そして、高度専門職では高度外国人材の活動内容を3つに分類してます。
高度人材外国人の3つの活動分類
高度外国人の活動分類は、大きく3つに分類されています。
1,高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
2,高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
3,高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
上記3つの活動に分類され、それぞれの活動に応じて、「学歴」「職歴」「年収」「研究実績」などの項目ごとにポイントが付与され、合計点によって高度専門職の在留資格の取得の可否を評価することになります。
高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」の活動は、
日本の公私の機関と契約に基づいて行う、研究、研究の指導又は教育をする活動を指します。
高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」の活動は、
日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動を指します。
「技術・人文知識・国際業務」のビザのような活動をイメージすればわかりやすいです。
※ただし、国際業務(通訳、翻訳、語学の指導等)は含まれていません。
高度専門職1号(ロ)の在留資格の必要書類については、以下の記事で解説をしています。↓
2022.02.12
高度専門職1号(ロ)ビザの申請時の必要書類について解説
技術・人文知識・国際業務等の就労ビザで日本で活動している外国人の方の中には、高度専門職の在留資格への変更を検討している方が多く存在しています...
高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」は、
日本の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動を指します。
「経営・管理」のビザのような活動をイメージすればわかりやすいです。
高度専門職1号(ハ)の在留資格の必要書類については、以下の記事で解説をしています。↓
2023.09.12
高度専門職1号(ハ)(高度経営管理)の必要書類について解説
外国人の方が日本で会社等を設立し、就労を行うためのには永住等の身分系の在留資格を除き、「経営・管理」という在留資格を取得する必要があります。...
これらの活動を行い、70点以上のポイントがあれば高度人材の在留資格を取得できる可能性が高くなります。
ポイント表については、以下のPDFを参照してください。↓(出入国在留管理庁ホームページより)
ポイント表における、年収の考え方については以下の記事で解説をしています。↓
2022.01.27
高度専門職の在留資格で必要となる年収とは?
「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格を持ち、日本で活動している外国人の方が「高度専門職」の在留資格に変更するケースが多くあります。 ...
上記の根拠となる法令「出入国管理及び難民認定法(別表第一)は、以下で確認できます。↓
高度専門職のビザを取得することによる優遇措置について
高度専門職ビザを取得することで、様々な優遇措置をうけることができるようになります。
複合的な在留活動が可能
通常の就労ビザの場合、複合的な在留活動をすることはできません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得して、企業で働いている外国人エンジニアの方が、働きながらエンジニアに関する事業を自ら起業することはできません。
しかし、高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」のビザを取得した場合、高度人材外国人として認定された活動に関連する事業については、複合的な活動が認められます。(高度専門職2号の場合は、関連性は特に問われません。)
5年の在留期間が与えられる
高度専門職の在留資格を取得すると、最長の在留期間「5年」を付与してもらうことができます。
永住許可要件の緩和
高度専門職の在留資格を取得すると、永住権を取得するための要件が緩和されます。
例えば、通常の永住権の申請では、10年間日本に在留していることが必要になります。
しかし、高度専門職ビザを取得すれば、ポイントが70点以上の外国人の方の場合、3年間日本に在留すれば居住要件を満たします。
また、80点以上のポイントを有している場合は、1年間日本に在留することで居住要件を満たすことが可能になります。
さらに、高度専門職の在留資格を有していない場合でも、永住権の申請時点と申請前(80点以上の場合は1年前、70点以上の場合は3年前)にポイントの要件を満たしている状況であれば、高度専門職ビザを申請を行わずに、永住権の申請をすることが可能になります。
具体的な内容については以下の記事で解説をしています。↓
2021.11.12
高度人材ビザ(高度専門職)の永住権申請について解説します。
高度人材ビザ(高度専門職)を取得することができれば、永住権を申請するかどうかの検討も始まると思います。 そこで、今回は高度人材ビザ(高...
配偶者の就労も可能
高度専門職ビザを取得した外国人の方の配偶者は、学歴等を満たすことなく就労することが可能になります。
ただし、「技術・人文知識・国際業務」等の活動に該当する業務内容に従事しなければならないので、工場での軽作業やコンビニでのアルバイト等は該当しないので注意が必要です。
また、日本人と同等の報酬を得る必要もありますので、注意が必要です。
通常の家族滞在ビザを取得する場合は、資格外活動の許可を受ければ、週28時間のアルバイトは認められます。
家族滞在ビザについては、以下の記事も参考にしてください。↓
2021.10.24
家族滞在の在留資格(ビザ)の申請について行政書士が説明します
「技術・人文知識・国際業務」や「経営管理」の在留資格を取得して、日本で活動している外国人の方の中には、母国で生活している家族を日本に呼んで一...
一定の条件の下で親の帯同が可能
例えば、「家族滞在」の在留資格では、親を呼ぶことは原則できません。
しかし、高度専門職の在留資格の場合、一定の条件の下で親を日本に呼んで生活をすることができます。
ここでいう一定の条件とは
世帯年収が800万円以上あること
高度専門職のビザを持っている外国人の方とその配偶者の年収を合算して、800万円以上あることが条件になります。
高度専門職ビザを取得している外国人の方と同居すること
高度専門職ビザを取得している外国人の方と継続して同居することが条件になります。
そのため、別居してしまうと資格該当性がなくなるため、更新が認められなくなってしまうので、注意が必要になります。
一方の親しか呼ぶことができない
例えば、高度専門職ビザを取得している外国人の方とその配偶者の両方の親を呼ぶことはできません。
呼ぶことができるのは、どちらか一方の親だけです。
ここでいう親には父母両方含まれますので、一方の親の父だけを呼ぶことができるということではありません。
一方の親であれば父母両方呼ぶことは可能です。
7歳未満の子を3カ月以上養育する目的であること
親を呼ぶことができるのは、7歳未満の子供の養育をする目的であることが必要になります。
そのため、親の介護等が理由で呼び寄せることはできませんので注意が必要です。
妊娠中の高度人材外国人又は配偶者の家事を3カ月以上手伝うこと
外国人の方が妊娠している場合、家事やその他の支援を3カ月以上行う目的であれば、親を呼び寄せることができるようになります。
また、出産後も引き続き子供の養育を行う場合は、上述した7歳に達するまで在留期間の更新を行うことができます。
親の帯同を申請するための必要書類については、以下の記事で解説しています。↓
2022.02.23
高度人材外国人(高度専門職)ビザの親の帯同に必要な書類について
通常の就労ビザで活動する外国人の方が、自身の親を日本に呼ぶことは認められておりませんが、高度人材外国人(高度専門職)ビザを取得して、日本で活...
一定の条件の下での家事使用人の帯同
現在、家事使用人を雇用している場合は、1人に限り日本に連れてくることができます。また、日本で新しく家事使用人を雇うことも可能になります。(この場合の家事使用人の在留資格は特定活動になります。)
※日本で新しく家事使用人を雇用する場合には、13歳未満の子供がいることなどの条件もあります。
ただし、現在雇用している家事使用人を日本に連れてくる場合は、日本に入国する前から1年以上、その家事使用人を雇用していることが必要になります。
また、予定年収が1000万円以上必要になり、雇用する家事使用人への報酬が月給で20万円以上支払うことが条件になります。
入国・在留手続の優先処理
高度外国人材に対する入国・在留審査は、優先的に処理が行われるようになります。
つまり、入国事前審査に係る申請については申請受理から10日以内、在留審査に関係する申請については申請受理から5日以内を目途に処理が行われます。
高度専門職2号について
上記の優遇措置は高度専門職1号の優遇措置について書いてきました。
高度専門職の在留資格には、「1号」と「2号」に分類されています。
高度専門職2号とは、「高度専門職1号」を取得後、日本に3年間在留した外国人の方を対象に付与される在留資格です。
つまり、高度専門職1号から在留資格変更申請を行うことで、高度専門職2号に変更することが可能になります。
高度専門職2号の優遇措置について
高度専門職2号の優遇措置は以下のものがあります。
・「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
・在留期間が無期限となる(永住権とは異なりますので注意が必要)
・上述した高度専門職1号の優遇措置が受けられる
等の優柔措置を受けることが可能になります。
「高度専門職2号」のメリットや永住権との比較等、「高度専門職2号」の詳細については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
2022.01.29
高度専門職2号とは?メリットや永住権との違いについて解説します
就労ビザ等の在留資格で日本に滞在している外国人の方で「高度専門職」と「永住権」どちらが良いのか?ということで迷われる方が多く存在しています。...
手続きの流れ
新規で日本に入国して、高度専門職の在留資格を取得しようとする場合は、「在留資格認定証明書交付申請」の手続きを行うことになります。
また、現在既に日本に在留している外国人の方が高度専門職の在留資格を取得したい場合は、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
以下に大枠の流れを記載していきます。
在留資格認定証明書交付申請の流れ
1,地方出入国在留管理局の窓口で申請を行う。
2,出入国在留管理庁の審査開始
3,在留資格認定証明書の交付
4,在外公館で査証申請(取得した在留資格認定証明書を提示)
5,入国、在留
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の流れ
1,地方出入国在留管理局の窓口で申請を行う。
2,出入国在留管理庁の審査開始
3,在留資格変更許可、在留期間更新許可
高度専門職の在留資格の相談は行政書士にできる?
高度専門職の在留資格に限らず、在留資格に関連する相談については、行政書士が専門分野としている業務であるため、高度専門職の在留資格についても行政書士に相談することができます。
行政書士の中でも申請取次の資格を保有している行政書士事務所は、出入国在留管理局まで申請の取次ぎまで可能になるため、申請者自身が入国管理局に提出する手間も省くことができます。
行政書士に相談を検討している方は以下の記事でも詳しく解説をしています。↓
2022.05.26
高度専門職の在留資格を行政書士に依頼した場合の料金(金額)の相場について
高度人材ポイント制を活用して70点以上のポイントがある場合は、高度専門職の在留資格を申請できる可能性が高くなります。 高度専門職の在留...
まとめ
今回は高度専門職(高度人材)ビザについて考えてきました。
高度専門職の在留資格を取得することで、日本での活動の幅が大きく増えることになります。
また、様々な優遇措置を受けれることで、日本での生活を長く続けていくことができます。
高い技術や専門知識を持つ外国人材は、とても貴重な存在であるため、今後も高度専門職の在留資格を取得する外国人の方は増えていくと考えられます。
高度専門職の在留資格を取得を検討している場合は、必要な書類等も多くなりますので、専門の行政書士等に相談する方法も有効な選択肢となります。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
以下の記事も良く読まれていますので参考にしてください。↓
2022.05.20
80点以上のポイントで高度専門職の在留資格を取得した方の永住権の申請について
高度人材ポイント制を利用して在留資格を取得した場合、高度専門職という在留資格を取得することができます。 この高度専門職の在留資格を取得...