技術・人文知識・国際業務等の就労ビザで日本で活動している外国人の方の中には、高度専門職の在留資格への変更を検討している方が多く存在しています。
高度専門職ビザを取得したいと希望する方が多い理由は、高度専門職ビザを取得することで、通常の就労ビザにはない優遇措置を受けることができるというメリットがあるからです。
しかし、優遇措置を受けることができるということは、高度専門職ビザを取得するための難易度も高くなり、多くの疎明資料等の書類が必要になってきます。
そこで、今回は高度専門職ビザを取得するために必要となる書類について考えていきたいと思います。
高度専門職ビザを新たに取得したい方や変更を検討している方の参考になれば幸いです。
高度専門職1号(ロ)とは
高度専門職の在留資格(1号)には、「高度専門職1号(イ)」、「高度専門職1号(ロ)」、「高度専門職1号(ハ)」の3つの分類があります。
その中の「高度専門職1号(ロ)」の在留資格は
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
を行う外国人の方が取得できる在留資格になります。
ちなみに「高度専門職一号(ハ)高度経営管理」については、以下の記事で詳しく解説してます。↓
2023.09.12
高度専門職1号(ハ)(高度経営管理)の必要書類について解説
外国人の方が日本で会社等を設立し、就労を行うためのには永住等の身分系の在留資格を除き、「経営・管理」という在留資格を取得する必要があります。...
また、高度専門職の在留資格を取得するための要件は、
申請人が行おうとする活動について、出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の「高度専門職1号イ」,「高度専門職1号ロ」,「高度専門職1号ハ」の活動のいずれかに該当すること。
2 申請人が、入管法第7条第1項第2号の基準を定める省令の「高度専門職1号」の基準にすべて適合すること。
3 入管法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令第1条の規定を適用して計算したポイントの合計が70点以上であること。
とされています。
そして、「高度専門職」の在留資格を取得することができれば、様々な優遇措置が与えられるため、「高度専門職」ビザを取得できれば、多くのメリットを享受することが可能になります。
「高度専門職1号(イ)」「高度専門職1号(ロ)」「高度専門職1号(ハ)」等の分類や、優遇措置等については、以下の記事でも詳しく解説をしています。↓
2023.09.14
高度専門職(高度人材ポイント制)ビザの申請について解説します。
高度の専門的な能力を有する人材として一定の基準を満たし、日本の学術研究又は経済の発展に寄与することが認められる外国人の方は、通常の就労ビザで...
高度専門職1号(ロ)ビザ申請時の必要書類
「高度専門職」ビザを取得するためには、ポイント制度を利用して、70点以上あることを証明していく必要があります。
そのため、70点以上あるということを疎明するための資料を準備する必要があります。
ポイント表については以下のURLから確認できます。↓
<参照:出入国在留管理庁HPより>
高度人材ポイント制の疎明資料
上述したとおり、高度人材ポイント制を利用して、高度専門職の在留資格を取得するためには70点以上あることを疎明していく必要があります。
以下に、それぞれのポイントを加点していくための疎明資料を記載していきます。
学歴
申請者の学歴を証明する文書を提出する必要があります。
例えば、博士学位(専門職学位を除く)であれば、30点の加点があります。
学歴を疎明する資料としては、
該当する学歴の卒業証明書及び学位取得の証明書
等が必要になります。
また、「複数の分野において博士若しくは修士の学位又は専門職学位」の加算を希望する場合には、必要に応じて成績証明書の提出が求められる場合もあります。
職歴
業務に従事していた期間や業務の内容を明らかにする資料を提出する必要があります。
これは、「高度専門職」ビザを取得して従事しようとする業務の期間等を証明するために必要になります。
例えば、10年以上の従事しようとする業務経験がある場合は、20点の加点があります。
職歴を疎明する資料としては、
勤務先等の在籍証明書
等の書類が必要になります。
転職をしているケースでは、転職前の企業においても同様の業務をしていた場合、前職の企業からも在籍していたことを証明する資料や業務内容を明らかにする文書を発行してもらえる場合は、前職の経歴も実務経験年数に加えることができます。
年収
申請者の年収を疎明する資料を提出する必要があります。
例えば、30歳未満で年収が1,000万円以上ある場合は、40点の加点があります。
年収を疎明する資料としては、
年収見込証明書等、雇用先から受ける報酬の年額を証する文書
等が必要になります。
また、この年収については、高度専門職ビザを取得して行う活動によって受け取る年収になるため、現在(過去)の年収ではなく、見込み年収であるという点に注意が必要です。
高度専門職ビザにおける年収については、以下の記事でも解説をしています。↓
2022.01.27
高度専門職の在留資格で必要となる年収とは?
「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格を持ち、日本で活動している外国人の方が「高度専門職」の在留資格に変更するケースが多くあります。 ...
年齢
年齢については、在留カードやパスポート等でも確認できるため、特に疎明資料は必要ありません。
例えば、申請の時点の年齢が30歳未満であれば、15点の加点があります。
研究実績
過去に研究実績等があれば、疎明資料を提出することで加点されます。
例えば、
①発明者として特許を受けた発明が1件以上あれば
申請人の氏名が明記されている特許証の写し
②外国政府から補助金、競争的資金等を受けた研究に3回以上従事
申請人の氏名が明記されている交付決定書の写し
③学術論文データベースに登載されている学術雑誌に掲載された論文が3本以上(※責任著者であるものに限る)
論文のタイトル,著者氏名,掲載雑誌名,掲載巻・号,掲載ページ,出版年を記載した文書
④その他法務大臣が認める研究実績
そのことを証する文書
等が必要になります。
上記、研究実績があれば、15点の加点があります。
資格
従事しようとする業務に関連する日本の国家資格(業務独占資格又は名称独占資格)を保有、又はIT告示に定める試験に合格し若しくは資格を保有している疎明資料を提出することで加点されます。
例えば、業務独占資格を1つ保有していれば5点の加点があり、複数保有していれば10点の加点があります。
資格を疎明する資料としては、
資格の合格証明書の写し
等が必要になります。
特別加算されるポイントについて
上記の学歴や年齢等以外にも、以下に該当する疎明資料を提出することができれば、ポイントの特別加算を受けることができます。
①申請者と契約をしている機関がイノベーション促進措置を受けている
この場合の疎明資料は
補助金決定交付書等の促進措置を受けていることを証する文書
が必要になります。
また、高度人材ポイント制の加点対象となるイノベーション促進支援措置は、以下の法務省告示別表第1及び別表第2に規定されています。
・イノベーション促進支援措置一覧
申請者と契約をしている機関が上記①に該当する企業であって、中小企業基本法に規定する中小企業者
この場合の疎明資料は
1,主たる事業を確認できる会社のパンフレット等
2,次のいずれかの文書
(1)資本金の額又は出資の総額を証する次のいずれかの文書
ア 法人の登記事項証明書
イ 決算文書の写し
ウ 資本金額,出資総額が確認可能な定款の写し
(2)雇用保険,労働保険,賃金台帳の写し等従業員数を証する文書
等の書類が必要になります。
国家戦略特別区域高度人材外国人受入促進事業の対象企業として支援を受けている
この場合の疎明資料は
国家戦略特別区域高度人材外国人受入促進事業認定企業証明書の写し
等の書類が必要になります。
契約機関が中小企業基本法に規定する中小企業者で、試験研究費及び開発費の合計金額が、総収入金額から固定資産若しくは有価証券の譲渡による収入金額を控除した金額(売上高)の3%超の場合
(1)契約機関が会社・事業協同組合の場合は以下のいずれかの疎明資料が必要になります。
1 試験研究費等及び売上高等が記載された財務諸表の写し
2 売上高等が記載された公的な書類(財務諸表,確定申告書の控え等)の写し,帳簿等の写し(試験研究費にあたる個所に蛍光ペン等で目印を付与)、試験研究費等の内訳をまとめた一覧表
3 税理士、公認会計士、中小企業診断士による証明書
(2)契約期間が個人事業主の場合は以下のいずれかの疎明資料が必要になります。
1 試験研究費等及び事業所得に係る総収入金額等が記載された財務諸表の写し
2 事業所得に係る総収入金額等が記載された公的な書類(財務諸表,確定申告書の控え等)の写し,帳簿等の写し(試験研究費にあたる個所に蛍光ペン等で目印を付与),試験研究費等の内訳をまとめた一覧表
3 税理士,公認会計士,中小企業診断士による証明書(書式自由)
従事しようとする業務に関連する外国の資格、表彰等で法務大臣が認めるものを保有
例えば、米国公認会計士等の外国の資格やアジアデザイン賞(グランドアワード(大賞))等の表彰等の法務大臣が認める資格等がある場合は、それを疎明する資料を提出することで加点されます。
この場合の必要書類は
資格を証する文書や表彰状
等が必要になります。
ただし、企業表彰、製品表彰については、受賞に当たり申請人が積極的に関与したものに限られます。
日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了
日本の大学や大学院を卒業している場合は、疎明資料を提出することで10点の加点があります。
必要な書類は
該当する学歴の卒業証明書及び学位取得の証明書
等が必要になります。
日本語能力
日本語先行で外国の大学を卒業している場合や、日本語能力試験N1合格相当であれば15点、日本語能力試験N2合格相当であれば10点が疎明資料を提出することで加点されます。
必要な書類は
卒業証明書又は合格証明書等の写し、日本語能力試験等の合格証明書等の写し
等が必要になります。
各省が関与する成長分野の先端プロジェクトに従事
内閣府や総務省等が関与する先端プロジェクトに従事している場合は、疎明資料を提出することで10点の加点があります。
必要な書類は
当該事業に関する補助金交付通知書の写し及び所属機関が作成した当該プロジェクトに従事している旨の説明資料
等が必要になります。
将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業名については、以下で確認できます。
・将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業名(令和3年9月現在)
一定の大学を卒業
以下のいずれかの大学を卒業している場合は、疎明資料を提出することで10点の加点があります。
① 以下のランキング2つ以上において300位以内の外国の大学又はいずれかにランクづけされている本邦の大学
(1)QS・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス(クアクアレリ・シモンズ社(英国))
(2)THE・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス(タイムズ社(英国))
(3)アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ(上海交通大学(中国))
②文部科学省が実施するスーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型及びグローバル化牽引型)において,補助金の交付を受けている大学)
スーパーグローバル大学創成支援事業については、文部科学省のホームページで公表されています。
必要な書類は
卒業した大学が、上記のいずれかに該当する大学であることを証する資料(法務省ホームページ写しの該当部分等)、及び該当する大学の卒業証明書又は学位取得の証明書
等が必要になります。
外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業の一環としてJICAが実施する研修を修了したこと
この研修を修了していることを疎明する資料を提出することで5点の加点があります。
ただし、イノベーティブ・アジア事業の一環としてJICAが実施する研修であって、研修期間が1年以上のものを修了した者が対象となります。
また、JICAの研修修了証明書を提出した場合、学歴及び職歴等を証明する資料は、原則として提出する必要はありませんが、(職歴)のポイントを加算する場合には、別途疎明資料が必要になります。
そして、本邦の大学又は大学院の授業を利用して行われる研修に参加した場合、(日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了)と重複して加算することは認められません。
必要な書類は
JICAが発行する研修修了証明書
等が必要になります。
投資運用業等に係る業務に従事
1申請人の所属機関の金融商品取引法第28条第2項に規定する第二種金融商品取引業,同条第3項に規定する投資助言・代理業又は同条第4項に規定する投資運用業に係る登録済通知書写し等
2申請人が上記のいずれかの業務に従事することを説
明する資料
等の疎明資料があれば、10点の加点があります。
疎明資料を準備して70点以上あれば大丈夫
上記に記載したポイントを加点していくための条件を全て満たす必要はありません。
例えば、イノベーション促進措置を受けていないとしても、他の「学歴」「職歴」「年齢」「年収」「日本語能力」等で70点以上あれば、高度専門職ビザを取得するための点数は満たしているので、申請をすることは可能になります。
そのため、上記の条件を全て満たす疎明資料がなければ申請できないということではありませんので、安心してください。
疎明資料以外の必要書類について(新規認定、変更申請)
ポイントの要件を満たしていることを疎明するための資料については、上述したとおりですが、それ以外に高度専門職ビザを取得するための書類を以下に記載していきます。
1,在留資格認定証明書交付申請書(※変更の場合は、在留資格変更許可申請書)
2,写真(縦4cm×横3cm)
3,申請人のパスポート及び在留カード 提示
4,ポイント計算表
5,日本において行おうとする活動に応じた在留資格の提出資料
上記5の提出資料については、以下の記事に記載している新規認定、変更許可の書類が必要になりますので参考にしてください。↓
2022.02.11
技術・人文知識・国際業務の在留資格の新規認定に必要な書類について
外国人留学生の方が日本で就職する場合や、海外から日本の企業に就職する場合には、一般的に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得し、日本で...
高度専門職ビザの申請は行政書士に依頼すると効率的
上述したとおり、高度専門職ビザは多くの書類を収集し、自身が高度人材外国人であるということを疎明していく必要があります。
また、多くの優遇措置を受けることが出来るようになるため、申請の難易度も通常の就労ビザよりも高くなります。
そのため、国際業務の専門家である申請取次行政書士に依頼することで、安心して申請手続きを進めていくことが可能になるので、選択肢の一つとして検討することもお勧めします。
まとめ
今回は高度専門職ビザの申請時に必要となる書類について考えてきました。
高度専門職ビザを取得できれば、様々なメリットを享受することが可能になるため、条件を満たしている方はぜひ申請を検討してみてください。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
高度専門職2号については、以下の記事で解説をしています。↓
2022.01.29
高度専門職2号とは?メリットや永住権との違いについて解説します
就労ビザ等の在留資格で日本に滞在している外国人の方で「高度専門職」と「永住権」どちらが良いのか?ということで迷われる方が多く存在しています。...
在留資格に関しては以下の動画でも解説をしています。↓