建設業許可

経営業務の管理責任者(常勤役員等)とは?証明書の書き方も徹底解説

建設業許可を取得するためには、多くの書類を収集、作成し、行政に提出する必要があります。

また、最近はコンプライアンスの観点から、軽微な工事を行っていたため、建設業許可を取得しなくても問題がなかった事業者にも、元請企業から建設業許可の取得を求められることも多くなってきています。

建設業許可を取得するためには煩雑な手続きを行わないといけないため、しっかりと必要書類を事前に把握しておくことがとても大切です。

そこで、今回は建設業許可を新規で取得する際に必要になる、「経営業務の管理責任者証明書」について考えていきたいと思います。

建設業許可の取得を検討している事業者の方の参考になれば幸いです。

建設業許可については以下の記事でも詳しく解説しています。↓

経営業務の管理責任者とは


経営業務の管理責任者証明書の解説をしてく前に、まず「経営業務の管理責任者」について解説していきます。

「経営業務の管理責任者」とは、建設業許可を取得するための必要な条件の1つである「経営業務の管理を適正に行う能力」を有している者のことを言います。

これは、建設業法第7条に規定されています。

以下、建設業法第7条の規定です。↓(一部抜粋)

(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

個人事業主や役員等の経験が必要になる


経営業務の管理責任者としての能力を証明するための基準は大きく2つあります。

常勤役員等のうち1人が管理能力を備えているケース
・このケースでは、過去に建設業を営んでいる事業者の役員や個人事業主として5年以上勤めている人材が事業所内に常勤していれば問題ありません。

常勤役員等のうち1人と補助する者で管理能力を備えているケース
・このケースでは、過去に建設業を営んでいる事業者の役員や個人事業主を2年以上勤めた人材とそれを補助できる能力がある人材が事業所内に常勤していれば問題ありません。

常勤役員等のうち1人が管理能力を備えているケース

このケースにおいては、経営能力を証明するためには、常勤している役員等のうち1人以上の人材が以下に該当している必要があります。

上記①or②の基準を満たしていることで経営業務の管理責任者としての要件を証明していきますが、実務上は①で証明するケースが大半を占めています。

そのため、②で証明するケースは少なく、とても難易度が高くなります。

また、ここでの「常勤している役員等」とは、例えば、法人の場合は当該法人の常勤役員、個人の場合は個人事業主や支配人等をことを言います。

具体的には以下の①~③に該当している必要があります。

①建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
②建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
③建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者


<参照:大阪府建設業許可申請の手引きより一部抜粋>

つまり、会社代表者やその会社の役員、支配人又は個人事業主本人が上記の①~③に該当していれば、「経営業務の管理責任者」としての要件を満たすことができます。

例えば、以下のようなケースであれば「経営業務の管理責任者」の要件を満たすことができます。

建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者

・株式会社、有限会社の取締役
・持分会社(合同会社等)の業務執行社員
・個人事業主又は支配人
・指名委員会等設置会社の執行役
・法人格のある各種組合等の理事
・支店長や営業所の所長

また、5年以上の経験を証明するためには、法人の登記事項証明書(閉鎖事項証明書)や確定申告書等の提出が必要になります。

建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者

このケースでは、執行役員等が該当しますが、上記①に該当する取締役等の役員から業務執行権限を譲り受けていることを証明していく必要があります。

ただし、業務執行権限を譲り受けていることの証明はとても難しいですので、注意が必要です。

建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

このケースでは、業務執行権限を譲り受けていることの証明までは不要になりますが、経営業務全般にかかわっていた経験を証明することが必要になり、とても難易度が高くなります。

上記①~③の要件を満たすことができれば、「経営業務の管理責任者」として経営能力を持っていることを証明できますが、②③の証明はとても難しいため、実務上は①の「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者」が事業所内に常勤していることが必要になります。

常勤役員等のうち1人と補助する者で管理能力を備えているケース

このケースでは、常勤役員と補助者を設置することで経営業務の管理責任者として証明していきます。

この場合、以下の(b1)(b2)のいずれかに該当し、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者として以下の(c1)(c2)(c3)の人材をそれぞれ設置する必要があります。

(b1)建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(b2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者

(c1)許可の申請を行う建設業者において5年以上の財務管理の業務経験を有する者
(c2)許可の申請を行う建設業者において5年以上の労務管理の業務経験を有する者
(c3)許可の申請を行う建設業者において5年以上の業務運営の業務経験を有する者


<参照:大阪府建設業許可申請の手引きより一部抜粋>

例えば、(b2)の場合、建設業者の取締役として2年の経験しか無いが、3年間は飲食店等の事業を行い、取締役の経験があれば(c1)~(c3)の補助者を設置することで「経営業務の管理責任者」としての要件を満たすことができるようになります。

しかし、補助者を設置するケースで「経営業務の管理責任者」の要件を証明することは、かなり難易度が高く、実務上は証明がかなり難しくなるため、申請自体が難しいと認識しておく必要があります。

経営業務の管理責任者の要件を満たすには常勤性が必要


「経営業務の管理責任者」として要件を満たすためには、上記以外にも「常勤性」が必要になります。

そのため、「経営業務の管理責任者」として証明する役員等の人材は、毎日会社に出勤し、自身の担当業務を行っていることが必要です。

当然、常勤しているということは、役員報酬等の報酬も支払われることになりますし、社会保険(健康保険等)にも加入していなければなりません。

役員報酬は、少なくとも月額10万円以上に設定し、支払われることが求められます。

また、事業所から極端に遠い地域に住んでいるような場合は、常勤性が疑われるため、認められない可能性が高くなります。

これは、建設業許可を取得するために、他社の役員等の名前を借りて(名義貸し)を行って経営業務の管理責任者の要件を満たすことを防止するための要件です。

常勤性については、例えば、他社でも取締役等に就任しているようなケースでは、常勤性が認められなくなりますが、非常勤の場合は常勤役員として認めてもらうことができる可能性があります。↓

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書とは


上記で「経営業務の管理責任者」について解説してきました。

ここからは、建設業許可を取得するために上記「経営業務の管理責任者」をを証明するための「経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書について解説していきます。

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書とは、「建設業法第6条、7条」及び「建設業法施行規則第3条」を根拠とし、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する」ことを証明するための書類です。

つまり、「経営業務の管理責任者」になる人物が、「経営業務の管理責任者」としての要件(5年以上の経営経験があること)を、その経営経験を積んだ事業者から証明してもらう書類です。

なお、経営業務の管理責任者証明書は、現在「常勤役員等証明書」という名称に変更されていますが、内容はほぼ同じです。

経営業務の管理責任者(常勤役員等証明書)証明書は建設業許可取得に必須

経営業務の管理責任者(常勤役員等)は、建設業許可を取得するためには必ず必要な条件であるため、全ての申請区分で提出が必要になります。↓

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書の書き方と記入例


経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書は、一般的に証明する者は、「建設業許可申請者」もしくは、「証明してもらう者(被証明者)が役員等で経営経験を積んでいた、過去に在籍していた事業者」のどちらかになります。

具体的には、以下のとおりです。

もう少しわかりやすく考えると、例えば以下のようなケースです。

①自身で建設会社を経営している代表取締役又は個人事業の代表が、自身が経営している会社(個人事業)の経営経験を代表取締役(個人事業主)自身が証明する場合

②過去に建設業を営んでいる会社で役員として勤務していて、その後独立し、自身で建設業を営む会社(個人事業)を立ち上げ、前職の役員経験から自身の経営経験を証明する場合

③建設業を営んでいる代表取締役が、自身の会社で経営経験がある他の役員を経営業務の管理責任者に指定する場合

④建設業を営んでいる代表取締役が、他の建設業者で経営経験がある役員を雇用し、その人材を経営業務の管理責任者に指定する場合

また、複数の会社における役員等の経験で、経営業務の管理責任者として証明する場合は、証明者ごとに証明書が必要になるため、2枚以上になることもあります。

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書は、以下の書類を作成していきます。↓

該当する経験の要件を記載

①該当する経験を記載

ここでは、該当する経験を(1),(2),(3)から選択し、該当しないものを横線で削除します。

なお、(1),(2),(3)は以下のことを指します。

(1)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

役職名等、経験年数

②役職名等

経営経験を積んだ時の役職名等を記入していきます。

例えば、代表取締役、取締役、事業主、支配人等が該当します。

ただし、この経営経験には非常勤の期間は含まれないので注意が必要です。

③経験年数

経営を経験していた経験年数を記載していきます。

ここでの経験年数は、「経営業務の管理責任者」として必要になる経営年数が必要です。

別で添付する常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の略歴書の内容と相違がないように記載しなければなりません。

証明者と被証明者との関係、備考、年月日、証明者

④証明者と被証明者との関係

証明者と証明される者との関係を記載していきます。

自己(本人)証明の場合は「本人」と記載します。

また、他社証明の場合は、役員等と記載することになります。

⑤備考

基本的には空欄ですが、証明者が許可申請者以外の業者である時には、「許可番号」「 許可年月日」「許可業種」を備考に記入します。

⑥年月日

証明者が証明した日付を記載します。

⑦証明者

経験年数に記載の期間に、被証明者が在籍していた法人の代表者又は個人事業主の「本店住所」「名称」「代表者名」を記載します。

証明者は原則、法人の代表者や個人事業主等の使用者でなければなりませんので注意が必要です。

該当する経験、年月日

⑧該当する経験

該当するものを選択し、①で記載した経営業務の管理責任者としての経験を記載します。

なお、
・「常勤の役員」は申請者が法人の場合
・「本人」は申請者が個人の場合
・「支配人」は申請者が個人で支配人を置いている場合
が該当します。

不要なものは横線で削除します。

⑨年月日

証明した日付を記載します。

申請先、申請者

⑩申請先

建設業許可申請を行う、申請先の都道府県を記載していきます。

不要部分は横線で削除します。

⑪申請者、届出者

当該建設業許可申請を行う申請者を記載します。

なお、経営業務の管理責任者が変更された場合は、届出が必要になり、その際は、届出者として本店所在地、商号(名称)、代表者名を記載することになります。

申請又は届出の区分

⑫申請又は届出の区分

建設業許可申請を行う目的にあった、区分を選択し、該当する数字を記載します。

以下、申請区分です。↓

⑬変更の年月日

上記⑫で「変更」に該当した場合は、変更した日付を記載していきます。

その他の場合は、空欄で問題ありません。

許可番号

⑭許可番号

上記⑫で「新規」以外を選択した場合は、既に取得している建設業許可の許可番号(大臣・知事コード、許可番号、許可年月日)を記載します。

なお、「大臣・知事コード」については、「建設業法施行規則 別表一」を参照して記載します。↓


<参照:建設業法施行規則別表一より抜粋>

また、複数の建設業許可を取得している場合は、最も古い許可年月日を記載することになります。

新規・変更後・常勤役員等の更新等、変更前

⑮新規・変更後・常勤役員等の更新等

経営業務の管理責任者の頭文字2つのフリガナを記載します。

また、氏名のフルネームを記載します。(姓と名の間はいます空ける。)

そして、生年月日を記載し、住民票上の住所を記載します。

住民票上の住所と実際の居宅が異なっている場合は、両方記載し、実際の居宅についての確認書類を添付する必要があります。

⑯変更前

⑫で「変更」を選択している場合は、変更前の経営業務の管理責任者の氏名と生年月日を記載します。

新規等の場合は空欄で問題ありません。

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書の記入例

上記内容を参考に「経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書」の記入例を以下に掲載しておきます。↓

経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書記入例

経営業務の管理責任者の条件を満たすためには


建設業許可を取得するためには、「経営業務の管理責任者」及び「専任技術者」が常勤で在籍している必要があります。

建設業者の方の多くは、「経営業務の管理責任者」の条件を満たすことができないため、建設業許可取得を断念してしまいます。

そのため、建設業許可の取得するためには事前に条件を整えておく必要があります。

経営業務の管理責任者条件を整える方法としては、

①代表者を含めて、自社で5年以上の経営経験を満たすまで事業を継続する。
②社外から経営経験の要件を満たした人材を役員として就任させる。

大きく2つの方法が考えられます。

①に関しては、最も確実な方法ですが、5年以上の事業をしている実績が必要になるため、時間がかかってしまうというデメリットがあります。

②については、社外人材を自社の役員に就任させることで、即時に経営経験の要件を満たすことができるようになりますが、当然、役員報酬等が発生するため、コストが増大してしまうというデメリットがあります。

専任技術者の実務経験証明書については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓

経営経験を証明するための書類が必要


「経営業務の管理責任者(常勤役員等)証明書」を提出すれば、経営経験を証明したことにはなりません。

その書類が間違いないということを疎明する資料も必要になります。

法人の役員だった場合は、法人登記事項証明書等で証明することができますが、個人事業主の場合は確定申告書が必要になるなど、経営経験を証明するための書類が全て揃っているのか。ということも事前に確認しておく必要があります。

経営業務の管理責任者がいなくなった場合


建設業許可取得後に、「経営業務の管理責任者」が退任する等して、不在になった場合は、許可を維持するための要件が満たせなくなるため、許可が取り消されます。

そのため、不測の事態が起こったとしても、建設業許可が維持できるように、複数人の経営経験を有する人材を育てておくことも重要なポイントです。

まとめ


今回は「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」と、その証明書について考えてきました。

建設業許可は多くの書類が必要になり、煩雑な手続きになります。

また、事前に建設業許可を取得することができるのか?といった要件の確認も許可取得を効率的に行うために必要なことです。

建設業許可を検討している場合は、専門家である行政書士に相談することで、効率的に許可取得まで進めていくことができます。

建設業許可取得を検討している事業者の方は、是非一度行政書士に相談してみてください。

今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。

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