建設業許可

一人親方(個人事業主)が建設業許可を取得する方法について解説

建設業許可を取得するには必ずしも法人であることが必要ではありません。

個人事業主であっても建設業を営んでいれば、許可を取得することが可能です。

そのため、当然、一人親方であったとしても一定の条件を満たせば、建設業許可を取得することができます。

そこで、今回は一人親方(個人事業主)が建設業許可を取得する方法について考えていきたいと思います。

建設業許可の取得を検討している方の参考になれば幸いです。

建設業許可については、以下の記事でも詳しく解説をしています。↓

一人親方(個人事業主)でも建設業許可は取得できる


上述したとおり、一人親方(個人事業主)であっても建設業許可を取得することができます。

建設業法では、法人でなければ建設業許可を取得できない旨は規定されていないため、一人親方でも許可要件さえ満たせば、当然建設業許可を取得することが可能です。

1件あたりの請負金額が500万円超える場合は個人でも建設業許可が必要

一人親方であったとしても、1件あたりの請負金額が500万円を超える場合には、必ず建設業許可が必要になります。

この500万円には、材料費等も含まれるため、一人親方でも請負金額が500万円を超えることは珍しくないので注意が必要です。

以前は、「請負金額が500万円」を超えないという理由で、建設業許可を取得しない一人親方も多くいましたが、近年は以下のような理由で500万円を超えなくても建設業許可を取得する事業者の方が多くなっています。

・元請会社から建設業許可取得の要請がある。
・同業他社の多くが建設業許可を取得してきている。
・発注者や顧客へのPR(信頼性向上)に繋がる

上記のような理由で、一人親方(個人事業主)でも建設業許可の取得する事業者が多くなってきています。

国土交通省が公表している建設業許可業者数調査によると、建設業許可業者数は473,952業者であるのに対し、個人事業主で建設業許可を取得している事業者数は74,474であり、全体の約15%となっています。

このことからも、一人親方(個人事業主)で建設業許可を取得している事業者が多数存在していることがわかります。

<参照:国土交通省 建設業許可業者の現況(令和3年3月末現在)

一人親方(個人事業主)で建設業許可を取得するメリット


一人親方(個人事業主)で建設業許可を取得するメリットは代表的なもので3つあると考えられます。

500万円以上の工事や公共工事の受注が可能

建設業許可を取得する一番のメリットは、請負金額が500万円以上の工事を受注することができるようになることです。

そのため、軽微な工事だけを請負う場合は、建設業許可がなくても建設業を営むことは可能です。

軽微な工事とは

ここで言われている「軽微な工事」とは、以下の工事を指します。

請負金額が500万円以下
建築一式工事1件の請負代金の額が1,500万円未満
建築一式工事の延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

等の工事を「軽微な工事」といいます。
<参照:国土交通省 建設業の許可とはより>

そのため、上記工事のみを請負う場合は、建設業許可は不要です。

しかし、上述したとおり、近年はコンプライアンスの関係から、元請業者から「建設業許可を取得して欲しい」と言われるケースも多くなってきており、軽微な工事だけを請け負っている建設業者も許可を取得している傾向にあります。

社会的信用度の向上

建設業許可を取得するためには、「人的要件」「財産的基盤」「営業所の存在」等の「ヒト・モノ・カネ」といった基盤がしっかりしていることを証明する必要があります。

そのため、建設業許可を取得しているということは、上記「ヒト・モノ・カネ」の要件を全て満たしているということをわかりやすく示すことができます。

そのため、元請会社や顧客からの信用度が向上するため、受注率のアップが期待できます。

さらに、許可を取得していることで金融機関からも融資を受けやすくなる等、建設業許可を取得によって社会的信用度が高くなります。

法人が取得する建設業許可よりも手続きが難しくない

建設業許可を取得するためには、多くの書類を作成・収集することは法人であっても個人であっても同様です。

しかし、法人が建設業許可を取得する時と比較し、個人で建設業許可を取得する方が、書類等が少なくなり、手続きが簡単になります。

一人親方(個人事業主)で建設業許可を取得するデメリット


一人親方(個人事業主)が建設業許可を取得することでメリットを享受することができますが、デメリットもあります。

建設業許可を取得するには費用が発生する

建設業許可を取得するためには、申請時に登録免許税として以下の費用を支払わなければなりません。

●知事許可・・・9万円
●大臣許可・・・15万円

また、申請書類も正副2部必要になるため、コピー代やその他書類を取得するための実費が発生します。

自身で手続きが難しい場合は、専門家である行政書士に依頼することになると、別途10万円~20万円程度の報酬が発生します。

更新や決算変更届等の手続きが必要になり、許可を維持するための手続きが発生する

建設業許可は、5年に1回、更新手続きを行う必要があります。

また、建設業許可は1年に一度、決算変更届という手続きを行う必要があり、許可を維持してくための手続きが発生します。

この手続きも行政書士に依頼すると、5万円~15万円程度の報酬が発生します。

決算変更届については、以下の記事で解説をしています。

一人親方(個人事業主)が建設業許可を取得するための4つの条件


建設業を営んでいる一人親方全員が建設業許可を取得できるのかというと、必ずしもそうではありません。

建設業許可は「許可制」なので、一定の条件をクリアしている事業者に与えられるものだからです。

建設業許可を取得するための条件は以下のとおりです。

経営業務の管理責任者が必要

建設業は、大きな金額で請け負うことが多いため許可を与えるにあたり、一定の経営経験が求められます。

つまり、営業所において、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理し、執行した経験がある者(個人事業主や法人の役員など)を経営業務の管理責任者として設置している必要があります。

具体的には、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。

①取得しようとする建設業業種に関する経営経験が5年以上あること

この場合に「経営業務の管理責任者」の要件を証明するためには、5年分の確定申告書の写し(原本提示)と5年分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。

②取得しようとする建設業業種以外の業種に関する経営経験が5年以上あること

この場合に「経営業務の管理責任者」の要件を証明するためには、上記同様に5年分の確定申告書の写し(原本提示)と5年分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。

一人親方の場合は、自身が経営業務の管理責任者になります。

その他、別の要件でも「経営業務の管理責任者」としての能力を証明することができますが、実務上は、上記いずれかで証明することがほとんどです。

経営業務の管理責任者については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓

専任技術者が必要

建設業許可を取得するためには、適切に請負契約の内容を履行することが求められるため、許可を受けようとする業種の工事について専門知識を持っている人材が必要になります。

専任技術者になるためには、一定の資格もしくは経験が必要になり、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

①指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する
②許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する
③国家資格者である
④複数業種に係る実務経験を有する

(※一般建設業の場合)

なお、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」は兼任することができるので、一人親方の場合は、親方が「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を兼任することになります。

専任技術者になることができる国家資格については、熊本県のホームページで公表されているものがわかりやすいので以下に掲載しておきます。

営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧

また、専任技術者ついては以下の記事でも解説をしています。↓

欠格事由がないことと誠実性

例えば、「破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない場合」や「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」等は欠格事由に該当し、建設業許可を受けることができません。

また、申請者が個人である場合においては、「その者又は一定の使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でない場合」に誠実性の基準に適合しているものとして取り扱われます。

具体的には、「建築士法宅地建物取引業等の規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者」等は、誠実性の基準を満たしていないと判断され、建設業許可を取得することができません。

財産的基礎等

建設業許可を取得するためには、財産的基盤が整っていることが必要になります。

法人であれば、資本金が500万円以上あれば、財産的基盤について証明することができますが、一人親方(個人事業主)の場合は、以下の内容で証明していきます。

①金融機関の預金残高証明書で、500 万円以上の資金調達能力を証明できること。
②貸借対照表における期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額が500万円以上であること

などで証明することになります。

金融機関の残高証明については以下の記事で解説をしています。↓

経営業務の管理責任者と専任技術者を証明するための必要書類は?


建設業許可は、書面で全て立証していくことになるため、「経営業務の管理責任者」「専任技術者」であることを疎明する資料も全て書面で提出することになります。

経営業務の管理責任者の要件を証明するための必要書類

上記でも少し記載しましたが、「経営業務の管理責任者」であることを証明するためには、以下の書類が必要になります。

①5年以上の確定申告の写し
②工事請負契約書
③注文書
④請求書

専任技術者の要件を証明するための必要書類

「専任技術者」であるkとを証明するためには、以下の書類が必要になります。

①指定学科を卒業した証明
②実務経験期間分の工事請負契約書
③注文書
④請求書
⑤入金を証明する通帳
⑥保有国家資格の合格証明書 

また、実務経験で専任技術者であることを証明するためには、「実務経験証明書」という書類も提出することが求められます。

実務経験証明書については、以下の記事で解説をしています。↓

建設業許可の取得申請をする時の注意点


建設業許可(知事許可)は、各都道府県を管轄する府県庁や土木事務所等で書類を提出し、申請することになります。

そのため、各地方自治体によっては求められる書類が異なりますので、個人で申請しようとする場合は必ず事前確認をしておくことをお勧めします。

例えば、大阪府であれば、請求書あれば、入金を証明する通帳の提出まで求められません。

また、兵庫県では、営業所の賃貸借契約書の写しの提出が求められますが、大阪府では提出が不要。

等といった違いがあります。

また、当然該当する要件によっては、上記全ての書類が必要になるという訳でもありませんので、どの書類が必要になるのか?ということを、事前に確認しておく必要もあります。

一人親方の方が複数業種で建設業許可取得をしたい場合は以下の記事も参考にしてください。↓

まとめ


今回は一人親方(個人事業主)が建設業許可を取得する方法について考えてきました。

最近は、建設業許可を取得することで、他の個人事業者との差別化を図るためや、元請会社からの要望等で個人事業者であっても建設業許可を取得する事業主が多くなってきています。

建設業許可を取得するには、煩雑な手続きを行う必要があり、また、許可を維持していいくための手続きも毎年行う必要があります。

そんため、建設業許可を取得について専門家である行政書士に相談するという方法も効率的に手続きを進めていくための有効な選択肢ですので、ぜひ一度検討してみてください。

今回の記事が建設業者の方の参考になれば幸いです。

以下の記事も良く読まれているので参考にしてください。↓

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