500万円以上の工事を受注するためには、建設業許可が必要になります。
また、最近では500万円を超えない工事を請け負っている建設業者の方も、元請側からの要請によって、建設業許可の取得を希望する事業者が多くなってきています。
建設業許可を取得するためには、多くの書類が必要になりますが、その1つとして「工事経歴書」という書類があります。
そこで、今回は建設業許可を取得するために必要となる「工事経歴書」の書き方も含め、解説していきたいと思います。
建設業許可の取得を検討している方の参考になれば幸いです。
建設業許可については、以下の記事でも詳しく解説をしているので参考にしてください。↓
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工事経歴書とは
工事経歴書とは、「建設業法第6条」を根拠に建設業許可を取得するために、添付しなければならない書面です。
建設業法第6条には以下のように規定されています。
建設業法第6条
(許可申請書の添付書類)
第六条 前条の許可申請書には、国土交通省令の定めるところにより、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 工事経歴書
二 直前三年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面
三 使用人数を記載した書面
四 許可を受けようとする者(法人である場合においては当該法人、その役員等及び政令で定める使用人、個人である場合においてはその者及び政令で定める使用人)及び法定代理人(法人である場合においては、当該法人及びその役員等)が第八条各号に掲げる欠格要件に該当しない者であることを誓約する書面
五 次条第一号及び第二号に掲げる基準を満たしていることを証する書面
六 前各号に掲げる書面以外の書類で国土交通省令で定めるもの
上記のように規定されています。
そして工事経歴書は具体的にまとめると、建設業許可を申請する業種について、申請直前の決算期に対応する完成工事高等を記載していく書類です。
工事経歴書の様式は、以下の様式が使用されています。↓
<参照:大阪府 建設業許可申請書類(法人用)より抜粋>
工事経歴書が必要なケース
建設業許可取得にあたり、工事経歴書が必要になるケースは、「建設業許可の更新申請」以外、全ての手続きで必要になります。
工事経歴書は、申請する建設業許可の業種ごとに必要になるため、例えば5業種を新規又は追加で申請する場合は、業種ごとそれぞれ必要になるため、5枚の工事経歴書を作成する必要があります。
また、工事経歴書は、毎年提出しなければならない、「決算変更届」でも必ず提出しなければならない書類になるため、とても重要な書類の1つです。
決算変更届については、以下の記事で詳しく解説をしてます。↓
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工事経歴書の書き方について
ここでは、工事経歴書の書き方について解説していきます。
建設工事の種類、税込・税抜の別
①建設工事の種類
建設業許可を取得したい業種ごとに作成していきます。
例えば、「電気通信工事」と「防水工事業」で許可を取得したい場合、それぞれの業種ごとに作成するため2枚作成することになります。
②税込・税抜の別
税込金額か税抜金額のどちらで記載しているのか明確にわかるように、該当する記載方法に〇をつけます。
ただし、「経営事項審査」を申請する場合は、必ず「税抜」にチェックしなければなりませんので、注意が必要です。
「経営事項審査」を申請しない場合は、「税込」「税抜」どちらにチェックを付けても問題ありません。(税理士が作成する決算書に記載されている方法に合わせると書きやすくなります。)
注文者、元請又は下請の別、JVの別
③注文者
工事を発注した注文者を記載していきます。
なお、個人情報の観点から、発注者が個人の場合は、氏名が特定されてないように、匿名で記載しなければなりません。
(例:個人Aなど)
④元請又は下請の別
受注した工事が「元請」or「下請」いずれかを選択して記載します。
⑤JVの別
工事がJV(ジョイントベンチャー)として行った工事の場合は「JV」と記載します。
JV(共同企業体)とは?
建設業許可におけるJV(ジョイントベンチャー)とは、建設企業が単独で受注及び施工を行う通常の場合とは異なり、複数の建設企業が、一つの建設工事を受注、施工することを目的として形成する事業組織体のことを言います。
詳しくは、国土交通省のホームページでも解説がされています。↓
工事名、工事現場のある都道府県名等、配置技術者
⑥工事名
正式に請け負った工事の名称を記載していきます。
工事の名称は、「請負契約書」や「請求書」と同じ内容で記載してくことになります。
そして、工事の名称については、許可を取得したい業種であることが明確にわかる名称であることが望ましいです。)
また、上記③の注文者同様に、工事の名称で個人が特定できる場合は、匿名で記載しなければなりません。
(例、A邸〇〇工事など)
⑦工事現場のある都道府県及び市区町村名
実際に行った工事現場の場所を都道府県名、市区町村名で記載します。
⑧配置技術者(氏名)
工事現場に配置された配置技術者(主任技術者や監理技術者)を名前を記載していきます。
⑨主任技術者又は監理技術者
上記⑧で記載した者が、「主任技術者」or「監理技術者」のどちらかをチェックで記載します。
請負代金の額、工期
⑩請負代金の額
請け負った工事の代金を記載していきます。
また、ジョイントベンチャーとして行った工事の場合、共同企業全体の請負代金の額に出資割合を乗じた額又は分担した工事額を記載していきます。
⑪請負代金の額(特定工事)
工事の一部に以下の工事のいずれかが含まれるケースでは、該当するものに〇をつけ、その工事の請負代金部分を記載していきます。
①プレストレストコンクリート構造物工事(PC)
②方面処理工事(方面処理)
③鋼橋上部工事(鋼橋上部)
なお、上記の工事については、「土木一式工事」「とび・土工・コンクリート工事」「鋼構造物工事」で扱う工事ですので、該当しない場合は、空欄で問題ありません。
⑫着工年月
工事の着工年月を記載していきます。
⑮完成又は完成予定年月
該当する工事の完成時期又は完成予定年月を記載していきます。
小計、合計
⑭小計
工事経歴書に記載した請負工事金額を合算した数字を記載します。
なお、上記⑪の工事を行っている場合は、右欄にその金額も記載します。
該当しない場合は、空欄で問題ありません。
また、元請工事がある場合は、元請欄に元請工事の金額を合算した数字を記載します。
こちらも上記⑪の工事を行っている場合は、右欄に記載します。
⑮合計
合計には、請け負った全ての工事の金額を記載します。
これは、その事業年度に計上した全ての工事が含まれますので、決算書等の金額も併せて確認する必要があります。
工事経歴書の記入例
上記、事例から工事経歴書の記入例を以下に掲載しておきます。↓
工事経歴書を書く時の注意点
工事経歴書については、上述した書き方で記載していくことになりますが、その他工事経歴書を作成する時に注意しておきたいポイントについて書いていきます。
工事経歴書の対象期間
工事経歴書は申請する時の事業年度の前年の事業年度に請け負った工事及び未完成工事が対象になります。
つまり、事業年度が4月1日~3月31日の場合、2022年8月に建設業許可申請を行うケースでは、2021年4月1日~2022年3月31日までの請け負った工事について記載した工事経歴書を作成します。
金額が大きい順に記載する
経営事項審査を受けない場合、完成した工事について、元請工事、下請工事に関係なく、請負金額が大きい順に概ね10件程度を目安に、請け負った工事名称等を記載していきます。
また、未完成工事については、完成工事を全て記載した後に、金額が大きい順に記載していきます。
未完成工事がない場合は、特に記載しなくても問題ありません。
大阪府の場合の工事経歴書の書き方
建設業許可は申請する都道府県によっては、書き方が多少異なるケースもあります。
上記で記載した書き方は、一般的なものになりますので、以下に大阪府における建設業許可申請における工事経歴書の記載例を掲載しておきます。↓
<参照:大阪府 建設業許可の手引きから一部抜粋>
まとめ
今回は、建設業許可に必要となる「工事経歴書」について考えてきました。
工事経歴書の書き方は少し複雑ですが、重要な書類になるためしっかりと作成していく必要があります。
また、工事経歴書以外にも多くの書類が必要になりますので、建設業許可を検討している事業者の方は、専門家である行政書士に相談することで効率的に許可取得まで進んでいくことができるようになります。
建設業許可の取得を検討している建設業者の方は、是非一度行政書士に相談してみてください。
今回の記事が建設業者の方の参考になれば幸いです。
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