建設業者の方の中には「建設業許可」の取得を希望している事業者の方も多くいらっしゃいます。
建設業許可は行政に対して、書類を収集・作成し、申請することになります。
建設業許可の取得にあたり最も気になるところは、「いったいどのくらい費用が必要になるのか?」というところではないでしょうか?
そこで、今回は「建設業許可申請にかかる費用」について色々考えていきたいと思います。
建設業許可取得を検討している建設業者の方の参考になれば幸いです。
建設業許可については、以下の記事でも詳しく解説をしているので参考にしてください。↓
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自分で建設業許可申請をした場合にかかる費用は?
建設業許可には、「大臣許可」と「知事許可」があり、どちらの許可を取得するかによって、登録免許税が変わってきます。
そのため、自分自身で建設業許可申請の手続きをする上で、必ず必要になる法定費用は以下のとおりです。
「知事許可」・・・9万円
「大臣許可」・・・15万円
「知事許可」と「大臣許可」の違いを簡単に解説すると、1つの都道府県にだけに営業所を置く場合は、その都道府県知事に対して許可を申請(知事許可)することになり、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は、国土交通大臣に許可を申請(大臣許可)することになります。
登録免許税以外にかかる費用は?
上述した通り、建設業許可申請を行うにあたり、必ず発生する法定費用は「登録免許税」です。
もちろん、建設業許可の取得を申請するためには、書類を収集する費用や提出するための交通費等も必要になります。
自分で建設業許可申請を行った場合の具体例
例えば、以下のような事例における、建設業許可申請の手続きを自分で行った場合の具体例について考えていきます。
<具体例>
・代表取締役(役員)が1人の株式会社
・建設業を開始して10年が経過
・初めて建設業許可を取得する
・経営業務の管理責任者、専任技術者、その他建設業許可に必要な要件を全て満たしている
・資本金は500万円
・知事許可の取得を希望
・本店所在地は大阪市中央区谷町
・代表取締役の住所及び本籍地も大阪市内
上記のケースで建設業許可を取得するための費用について考えていきます。
大阪府庁にて事前相談
まず、自身が建設業許可を取得することができるのか?ということを大阪府庁にて事前相談を行います。
必要な書類や経験を証明するために必要な書類(確定申告書等)等の事前に確認すべきことを質問し、建設業許可の取得ができることをあらかじめ確認します。
大阪府庁には電車で行ったとしたら、最寄り駅はコスモスクエア駅になるので交通費(往復)で、560円かかりました。
車で行ったとしても、近くにパーキングがあるので、1000円程度で行くことができます。
大阪府庁の情報は以下に掲載しておきます。↓
<参照:大阪府ホームページ 建築振興課 所在地・電話番号等より一部抜粋>
住民票・身分証明書を取得
建設業許可申請には、役員全員の住民票と身分証明書が必要になります。
今回は、代表取締役(役員)が1人であったため、各1枚を取得すれば問題ありません。
住民票と身分証明書について
代表取締役は大阪市内に住んでいるため、大阪市中央区役所に住民票を取得に行きます。
また、本籍地も大阪市内であったため、住民票と併せて身分証明書も取得しました。
なお、ここで必要とされている身分証明書とは、2項目あり「後見の登記の通知を受けていない」ことおよび「禁治産および準禁治産の宣告の通知を受けていない」という項目「破産宣告または破産手続開始決定の通知を受けていない」という項目が証明される書類です。
住民票と身分証明書の料金は以下のとおりです。
1,住民票・・・300円
2,身分証明書・・・300円
そのため、役所には自転車で取得しに行ったので、交通費はかからず、合計600円となりました。
後見登記等に関する登記事項証明書、法人登記事項証明書の取得
後見登記等に関する登記事項証明書の提出も必要になるので、大阪法務局本局に取得に行きます。
また、法人登記事項証明書も必要になり、同じ法務局内で取得できるため併せて取得します。
法人登記事項証明書は600円で取得できるため600円分の収入印紙を購入して、発行してもらいました。
後見登記等に関する登記事項証明書について
一般的には「登記されていないことの証明書」と呼ばれています。
この「登記されていないことの証明書」とは、成年後見制度の利用者を登記(登録)している後見登記等ファイルに登記(登録)されていないことを証明するものです。
この書類は、大阪法務局内にある印紙売り場にて300円を購入して発行してもらいます。
そのため、「登記されていないことの証明書」「法人登記事項証明書」の取得にかかった費用は以下のとおりです。
1,登記されていないことの証明書・・・300円
2,法人登記事項証明書・・・600円
この書類も、中央区役所から直接自転車でいったため、交通費はかかっていません。
また、車で行く場合でも、無料で駐車場を使用することができますので、そちらを使用することも可能です。
大阪法務局の情報は以下に掲載しておきます。↓
<参照:大阪法務局 成年後見登記証明書の発行についてより一部抜粋>
法人事業税納税証明書の取得
大阪府中央府税事務所にて、法人事業税納税証明書の取得が必要なので、取得に行きます。
法人事業税納税証明書は、1件につき400円が必要になります。
そのため、法人府民納税証明書の取得にかかった費用は以下のとおりです。
1,法人府民税納税証明書・・・400円
なお、今回は既に事業を行っている株式会社の事例で進めていますが、個人事業主から新設法人を設立した場合等には、法人府民税納税証明書を取得することができないため、法人設立等申告書の写しの提出で大丈夫です。
大阪府中央府税事務所も大阪法務局から近かったため、自転車で行きました。
そのため、交通費は0円です。
大阪中央府税事務所の情報は以下に掲載しておきます。↓
<参照:大阪府ホームページ 大阪府中央府税事務所より一部抜粋>
書類の作成
役所等で必要な書類を全て取得したので、建設業許可申請のために書類を作成していきます。
「実務経験証明書」「経営業務管理責任者証明書」「専任技術者証明書」等、難しい言葉が沢山出てきて、書類の書き方等がわからなくなったので、再度、大阪府庁にて相談をしました。
大阪府庁は平日の9時~17時までしか相談ができないので、現場が入っていない時に無理やり時間を作って相談に行きました。
実務経験証明書については以下の記事で詳細に解説をしています。
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相談には車を使ったのでパーキング代等を合わせて1000円程度かかりました。
大阪府庁で建設業許可申請
事前相談も行い、なんとか書類も作成でき、申請手続きまで進むことができました。
建設業許可申請時に、登録免許税として9万円支払いました。
申請窓口で以下の書類をもらい、クレジットカードで支払うことができました。(大阪府の場合)
ここまで、自分で建設業許可申請の手続きを行った場合、登録免許税9万円+正副コピー代や交通費、書類取得費等の実費3,000円程度必要になります。
今回は、スムーズに進めていくことができましたが、実際は色々イレギュラーな問題が発生することが多いので、途中で頓挫するケースも多くあります。
よくある相談の1つに、建設業許可を取得したいけれど「資本金が500万円未満」のケースがあります。
資本金が500万円未満の場合で建設業許可の取得を検討している方は、以下の記事も参考になります。↓
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建設業許可申請に必要な書類について
上記事例から、建設業許可申請に必要となる書類は以下のようになります。
上記書類の中の1つ建設業許可申請書の書き方については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
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確定申告書や請求書等も必要になる
建設業許可を取得するためには、「経営業務の管理責任者」「専任技術者」という人的要件を満たす必要があります。
「専任技術者」については、国家資格等があれば、実務経験が不要になりますが、資格がない場合は10年以上の実務経験が必要です。
また、「経営業務の管理責任者」についても5年以上の経営経験がなければ、要件を満たすことができません。
この2つの人的要件を満たしているかどうか?の確認のために、確定申告書や請求書(請負契約書等)等の書類の提示も必要になります。
また、前職での経験を実務経験として含めるためには、前職の会社等から証明を取得する必要もあるため、建設業許可の取得を検討した時は、まず始めに「人的要件」を証明することができるのか?という部分を確認する必要があります。
経営業務の管理責任者については、以下の記事で解説をしています。↓
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自分で建設業許可申請をした場合のメリット・デメリット
行政書士等の建設業の専門家に依頼した場合にもメリット・デメリットがありますが、自分で建設業許可申請をした場合のメリット・デメリットにはどのようなものがあるか考えていきます。
自分で建設業許可申請をした場合のメリット
・行政書士などに依頼した時に発生する費用がかからないので、費用を抑えることができる。
・自分のペースで建設業許可申請をすることができる。
自分で建設業許可申請をした場合のデメリット
・建設業許可申請をするための書類は沢山あるので、専門家でないと収集や作成に時間がかかる。
・書類確認のために何度も大阪府庁へ足を運ばなければならない。どの書類をどこで取得しなければならないのかわからなくなる。
・許可取得のための要件を自分で確認しなければならない。
・大阪府庁は平日の朝から夕方までしか対応してくれないので、担当者と直接相談したい時は、仕事を休まなければならないこともある。
上記のようなメリット・デメリットがあります。
簡単にまとめると、メリットとしては「経費を抑えることができる。」ということです。
しかし、デメリットとして「許可を取得するまでに時間がかかってしまう。」という問題が発生します。
特に行政手続きに慣れていない場合は、書類の収集だけでも時間がかかる上、書類の作成等も必要になるので、自分自身で建設業許可の手続きを行う場合は、時間がかかってしまうことは仕方がないのかもしれません。
その反面、自分自身で建設業許可の手続きを行うことの最も大きなメリットは費用を抑えることができるということです。
当然、行政書士などの専門家に依頼すると、対価として報酬を支払う必要があります。
上述した通り、建設業許可の法定手数料は知事許可の場合「9万円」しかかかりません。その他、必要な経費は書類の取得にかかる費用のみとなります。
つまり、行政書士に依頼した場合は、時間を短縮することができるが費用がかかり、自分で建設業許可の手続きを行うと費用を抑えることができるが時間がかかるというように、費用と時間がトレードオフの関係になります。
行政書士に依頼した場合にかかる費用は?
行政書士は業務として建設業許可申請のための書類を作成し、提出することができます。もちろん行政書士業務として仕事をするため対価が発生します。
建設業許可申請にかかる費用は各行政書士事務所によって異なりますが、概ね10万円から25万円の間で推移していると見受けられます。
また、知事許可よりも大臣許可の方が、難易度が上がるため費用が上昇する傾向にあります。
下では、インターネットで調べた、ある行政書士事務所さんの料金プランをご紹介します。
※2022年8月時点の情報です。変わっていることがあります。あくまでネット上で調べた情報ですのでご留意ください。
ある行政書士事務所の事例1
某行政書士事務所Aでは、建設業許可(知事許可)の費用が約8万円~となっています。
金額は低く設定していますが、社会保険等の顧問も前提としているため毎月の顧問料も発生するとのことです。
ある行政書士事務所の事例2
某行政書士事務所Bでは、報酬が掲載されていません。
許可を取得したい事業者によって、申請の難易度が異なるため、事前に問合せを行ない、改めて見積りを提示する形を取っています。
打合せの後に見積書が提示されるため、ある程度精度の高い見積りが期待できます。
ある行政書士事務所の事例3
某行政書士事務所Cでは、個人事業主の場合と法人の場合とでかかる費用が異なっています。
・個人事業主の場合は12万円~
・法人の場合は18万円~
という風に、事業形態によって報酬額が異なります。
なお、全ての事務所において「〇〇万円~」と記載されているので、実際は申請者の状況によって、報酬額が変動することが予想されます。
日本行政書士会連合会から建設業許可の報酬統計も公表されている
上記のように行政書士事務所によって建設業許可申請の報酬は異なっています。
以下、参考に日本行政書士会連合会から公表されている建設業許可申請における行政書士の報酬統計を掲載しておきます。↓
<参考:日本行政書士会連合会 報酬額の統計より一部抜粋(令和2年度)>
上記の統計資料からわかるとおり、建設業許可申請を行政書士に依頼した場合には、概ね10万円~20万円が相場であることがわかります
なお、上記の報酬には建設業許可申請時に必要になる9万円の証紙は含まれていないので、総額でみると概ね20万円~30万円が相場になるのではないでしょうか。
行政書士事務所によって費用に差がある理由は?
上述した通り、各行政書士事務所によっては費用に差があります。
費用に差がある理由としては、
①建設業許可は申請者の状況によって難易度が異るため、費用に差が出る場合がある。
②経験がないので費用を安くしてお客様の問い合わせを増やそうと価格競争をしかけている。
③建設業許可を業務としてあまりこなしていないので、適正価格がわからない。
④安く見せているが、後から必要なサービスを付け足し、別途費用を請求する。
など色々な要因があります。
もちろん行政書士にかかる費用は安いにこしたことはありませんが、行政書士は目に見えないサービスを提供する業種でもありますので、一度相談という形でお話をした上で、信頼できる行政書士だと感じた方に依頼することが最善の方法だと考えられます。
行政書士を選ぶ際のポイントは?
上述した通り、実際に話してみて信頼できるかどうかで判断することが良い行政書士に出会えるポイントではありますが、それ以外にも
・親身になった相談にのってくれる
・建設業許可についての知識がある
・コミュニケーション能力が備わっている
・自宅兼事務所ではなく、独立した事務所で行政書士事務所を運営している。
上記ポイントは当たり前のことですが、以外とできていない事務所も多く見受けられますので、是非参考にして頂ければと思います。
建設業許可を維持するために必要な費用は?
建設業許可は取得してからも、維持していくために多くの手続きを行わなければなりません。
決算変更届
決算変更届は、毎年事業年度終了後、4ヶ月以内に行わなければならない手続きです。
新規許可のように登録免許税は不要ですが、行政書士に依頼した場合の報酬額の相場は5万円前後になります。
決算変更届については以下の記事で詳しく解説をしています。↓
2021.01.15
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建設業許可の更新手続き
建設業許可は5年に1回更新手続きを行わなければなりません。
更新手続きには法定費用として、5万円が必要になります。
また、行政書士に依頼した場合は、10万円~20万円あたりが費用の相場になります。
建設業許可の変更手続き
会社名や営業所の住所、経営業務の管理責任者、専任技術者など、申請時の内容に変更があると、その都度変更届を出さなければなりません。
法定手数料は必要ありませんが、行政書士に代行する場合は1つの変更あたり3万円~5万円が相場となります。
まとめ
建設業許可の手続きには沢山の書類を作成、収集する必要があり、戸惑うこともあると思います。
また、個人で建設業許可の手続きをすると費用を抑えることができるメリットがあり、行政書士に依頼するか迷う方も多くいらっしゃいます。
時間を短縮し、効率的に帰化申請を行いたいとお考えの方は、行政書士に依頼をすることも検討みてください。
逆に、自分のペースで費用を抑えて建設業許可の手続きをしたいとお考えの方は、自分自身で申請に挑戦してもよいかもしれません。
行政書士に依頼することにはメリットもありますが、デメリットもあります。
もちろんそれを裏返せば、自分自身で建設業許可の手続きをしてもメリットがあれば、デメリットもあります。
どちらが自分にとって良い選択なのか、建設業許可申請をする前に一度検討をしてみてはどうでしょうか?
今回は建設業許可申請の費用の相場など、建設業許可の手続きを行うにあたって気になるポイントを書いてきました。
是非、建設業許可の手続きをする際の参考にしてみてください。今回の内容が建設業者の方の役に立てば幸いです。
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