在留資格

建設業(特定技能)の受入計画について解説

日本で外国人の方が就労するためには、その目的にあった在留資格が必要です。

近年、深刻な人手不足が社会問題になっていることを鑑み、在留資格「特定技能」が創設されました。

特定技能の在留資格は「特定産業分野」の業種のみ対象となっており、その1つに建設業が入っています。

これまで、「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格では、建設現場で働くことはできませんでしが、「特定技能」の在留資格においては、一定の条件の下、建設現場で働くことが可能です。

それぞれの特定産業分野によって必要な要件等は異なり、建設業の特定技能においては、在留資格の申請をする前に、国土交通省に対して受入計画の認定を受ける必要があります。(認定を受けるまえに在留資格の申請もできますが、在留資格の新規、変更の許可を得るためには、受入計画の認定証の写しを入国管理局に提出する必要があります。)

そこで、今回は建設業における特定技能に必要な受入計画について考えていきたいと思います。

外国人の方の雇用を検討している建設事業者の参考になれば幸いです。

在留資格に関することについては以下の記事でも記載しているので参考にしてください。↓

特定技能受入計画とは


特定技能受入計画とは、建設分野で特定技能の在留資格を申請する際に国土交通省に対して認定を受ける必要がある手続きです。

この特定技能受入計画の趣旨は以下のとおりです。

・低賃金や社会保険未加入といった処遇で外国人労働者を雇用する企業を認めないことで公正な競争環境の確保
・外国人の失踪・不法就労の防止
・他産業・他国と比較して有為な外国人材の確保
・特定技能人材を雇用している企業等の受注環境の変化が起こった場合でも建設業界として特定技能外国人の雇用機会を確保すること

等のことにより特定技能人材を受け入れるにあたって、建設業界として必要であることを国土交通大臣による認定及びその実施状況の継続的な確認により担保するということです。

特定技能受入計画の認定基準について


特定技能受入計画の認定を受けるためには以下の基準を満たしていることが必要です。

建設業法第3条第1項の許可を受けていること。
②建設キャリアアップシステムに登録していること。
特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入、またはJAC傘下の団体への加入及びその法人等が規定する行動規範を遵守すること。
④建設特定技能受入計画の申請の日前5年以内又はその申請の日以後に、建設業法に基づく監督処分を受けていないこと。
国内人材確保の取組を行っていること。
⑥1号特定技能外国人に対し、同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能の習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約に明記していること。
⑦1号特定技能外国人に対し、特定技能雇用契約を締結するまでの間に、当該契約に係る重要事項について、当該外国人が十分に理解することができる言語で説明していること。
⑧1号特定技能外国人の受入れを開始し、若しくは終了したとき又は1号特定技能外国人が特定技能雇用契約に基づく活動を継続することが困難となったときは、国土交通大臣に報告を行うこと。
⑨1号特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること。
⑩1号特定技能外国人が従事する建設工事において、申請者が下請負人である場合には、発注者から直接当該工事を請け負った建設業者の指導に従うこと。
⑪1号特定技能外国人の総数が常勤の職員の総数を超えないこと。
⑫1号特定技能外国人に対し、受け入れた後において、国土交通大臣が指定する講習又は研修を受講させること。

等の基準を満たしていることが必要です。

以下、国土交通省より公表されている受入企業側の認定条件がわかりやすいので掲載しておきます。↓

<参照:国土交通省ホームページより一部抜粋>

また、上記①の建設業許可については以下の記事で詳しく解説をしています。↓

受入計画の認定を受けるための必要書類について


受入計画の認定申請はオンラインにて行うことになります。
オンライン申請は以下のURLから行うことができます。↓
https://gaikokujin-shuro.keg.jp/gjsk_1.0.0/portal

建設分野の特定技能の受入計画の認定を受けるために必要な書類の代表的なものは以下のものです。

登記事項証明書、住民票(原本)等

申請日より3か月以内に発行されたものが必要です。

また、法務局で発効されたものに限るので注意が必要です。民事法務協会発行の「登記情報提供サービス」を利用したものは不可です。
登記事項証明書は法務局で直接取得することもできますし、オンラインで申請することも可能です。以下、法務局のホームページを参考にしてください。↓

建設業許可証の写し

建設業許可については、特定技能外国人に従事させる業務と、取得している許可業種について一致までは求められていません。

厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書

法人で申請する場合は、常勤職員数を明らかにする資料として厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の提出が必要です。
これは、社会保険(建設国保を含む)に加入している者のうち、以下の区分に応じ、それぞれの条件に該当する者をカウントする必要があります。

①役員:常勤の役員で報酬額が一定額以上である者。
②日本人従業員:パート勤務等の短時間労働者ではない者。
③外国人従業員:パート勤務等の短時間労働者ではなく、かつ在留資格が「特定技能」「技能実習」「特定活動(特定技能移行予定等)」ではない者。

建設キャリアアップシステムの事業者IDを確認する書類

受入計画の認定にあたっては、事業者IDは必ず取得してからでないと申請できないので注意が必要です。

また、
・申請時に日本の在留資格をもっていない状態で海外に居住している場合
・申請日に特定技能以外の在留資格で他社に勤務している場合
等については、申請会社で勤務開始後、速やかに技能者登録申請を行い、技能者IDが発行されたら受入報告から技能者IDを修正する必要があるので忘れないようにしなければなりません。

JACの会員証又はJACの正会員である建設業者団体の会員であることを証する書類

JACについては正会員、賛助会員どちらでも申請は可能です。
どちらの場合にも会員証明書の提出が必要です。

ハローワークで求人した際の求人票

求人票を添付する趣旨は、認定要件の1つである「職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内人材の確保の取組を行っていること」を満たしていることを証明するためなので、必須書類となります。

また、申請日から直近1年以内。フルタイムかつ建築・土木の作業員の募集であることが必要です。

同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書

比較対象の日本人と報酬額に差がある場合、その差の合理的理由を具体的に記載する必要があります。
国土交通省から公表されている記載例を以下に掲載しておきます。↓

<国土交通省【特定技能制度(建設分野)】より一部抜粋>

就業規則および賃金規程

常時雇用している人数が10名以上の場合は、必ず添付が必要です。
また、就業規則とは別に、賃金規程や退職金規程がある場合は、それらも提出も必要です。
この書類には、労働基準監督署の受付印が押印されているものを提出が必要です。

同等の技能を有する日本人の賃金台帳

上記の同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書に記載した日本人の賃金台帳を提出する必要があります。
なお、この賃金台帳は過去1年分のものを添付することになります。

同等の技能を有する日本人の実務経験年数を証明する書類

こちらも上記の同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書に記載した日本人の経歴書を提出する必要があります。

以下、国土交通省から公表されている記載例を掲載しています。↓

特定技能雇用契約書および雇用条件書

この書類は
①特定技能雇用条件書
②重要事項事前説明書
③外国人就労管理システムのへの入力
について、これらの3点の全て同じ内容で作成しなければなりません。
異なる箇所があれば補正の対象となるので注意が必要です。

時間外労働・休日労働に関する協定届、変形労働時間に係る協定書、協定届、年間カレンダー

こちらは該当する場合に提出が必要です。

雇用契約に係る重要事項事前説明書の写し

業務内容を単に「土木」「建築」「ライフライン・設備」などと記載したものは重要事項を説明したものと認められません。外国人にも具体的にわかるように記載しする必要があります。

国土交通省から公表されいている重要自己説明書の記載例を以下に掲載しておきます。↓

上記の書類等を提出する必要があり、多くの書類が必要であることがわかります。

上記の書類一覧をまとめたものが、国土交通省から公表されているので、以下に掲載しておきます。↓

特定技能受入計画の申請方法


受入計画の認定申請はhttps://gaikokujin-shuro.keg.jp/gjsk_1.0.0/portalにアクセスしオンラインで申請する必要があります。

オンライン申請の際に事前に準備しておいた方が良い注意点は以下のとおりです。
①オンライン申請では、添付書類として複数の書類をアップロードする必要があります。そのため、申請の前に、上記の書類をスキャンしてPDF化するか、写真に撮ってJPEG 化して用意しておくとスムーズに進めていくことができます。

②複数の書類を1つのPDFファイルにせず、1書類1ファイルにして何の(誰の)書類か判るデータ名にする必要があります。

例えば:KOKUDO TARO 重要事前説明書交通太郎賃金台帳など

(ただし、雇用契約書と雇用条件書は1ファイルにまとめるのは可能です。)また、1つの書類を1ページずつPDFやJPEGにすることもできる限り避た方が良いです。

特定技能外国人の受け入れ後は受入報告が必要


上記の国土交通省からの建設特定技能受入計画の認定を受け、特定技能外国人が就労を開始してから1か月以内に「受入報告」を行う必要があるので忘れないように注意が必要です。
受入計画の認定申請と同様に、受入報告についてもオンラインで申請となります。
受入れ報告については、下記の必要書類をアップロードすれば完了です。

①建設キャリアアップシステム(CCUS)カードの写し
※申請時に未登録の場合。CCUSの登録に時間を要する場合には、以下でも可)
②建設キャリアアップシステム(CCUS)への申請を行ったことを証する書類もしくは、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録に時間を要する旨を記した理由書

また、以下の情報も登録する必要があるので、事前に確認しておくとスムーズに申請ができます。

①在留カード番号
②在留期間満了年月日
③CCUS技能者ID
④上陸年月日(※入国した日。建設就労者受入事業等からの継続で在留資格切替えの場合、元の在留資格での入国日。)
⑤特定技能従事開始年月日

受入計画認定までの審査期間は?


1号特定技能受入計画審査期間については、建設特定技能受入計画認定申請から認定までに補正期間を除いて1か月半~2か月程度と公表されています。

ただし、例えば、関東地方整備局では非常に多数の申請をがある状況が続いているため、それ以上の時間を要することもあります。
申請は就労の6ヶ月前から可能ですので、早めの申請手続きを行うことをお勧めします。

まとめ


今回は、建設分野の特定技能の在留資格の申請に必要が受入計画の認定について考えてきました。

特定技能の在留資格の申請は、建設分野の場合は「国土交通省」及び「入国管理局」に対しての申請が必要になり、とても煩雑な手続きです。

そのため特定技能外国人材の採用を検討している場合は、行政書士等の専門家に相談する方法も有効な選択肢の1つです。

今回の記事が、建設分野の特定技能外国人材の雇用を検討している方の参考になれば幸いです。

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