在留資格

外国人が就労資格証明書を転職する際に取得する時の必要書類とは

転職希望の技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得している外国人の方を雇用しようと考えている企業の方が気をつけなければならないことは、その外国人の方が現在の在留資格のままで就労することができるかどうかです。

技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得している外国人の方は、前職での就労活動を基に在留資格が付与されています。

そのため、在留資格を取得しているから、自身の会社でも雇用することができると思い、採用したものの、実際は付与されている在留資格の活動範囲ではないことで、雇用主と外国人の方双方に不利益を被ることもあります。

本当に外国人の方が、現在の在留資格で就労することが可能かどうか判断する方法の一つに、「就労資格証明書」というものがあります。

そこで、今回は外国人の方が転職しても働くことが可能かどうか判断する方法の一つである「就労資格証明書」について、必要書類も含め考えていきたいと思います。

就労ビザについては以下の記事で解説しています↓

就労資格証明書とは


そもそも、就労資格証明書とは、「出入国管理及び難民認定法第19条の2」で以下のように規定されています。

出入国在留管理庁長官は、本邦に在留する外国人から申請があったときは、法務省令で定めるところにより、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができる。

つまり、就労資格証明書を簡単にまとめると、新しく転職する企業で適正に働くことができる(もしくはできない)ことを、出入国在留管理局に判断してもらうものになります。

就労資格証明書を取得するメリット

就労資格証明書を取得することで、以下のようなメリットがあります。

メリット1 在留資格を更新する際の更新不許可のリスク低減

外国人の方が日本で就労するためには、「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格が必要になります。

在留資格は、外国人の方に付与される「在留カード」を見ることで、どの在留資格が与えられているか判断することが可能です。

しかし、在留カードには在留資格の名称しか書いていないため、実際に雇用する外国人の方が企業が期待している就業をすることができるかどうかの判断をすることができません

在留資格には1年、3年、5年等の在留期限が決められており、在留期間満了後も日本で活動したい場合は、在留期間の更新許可を出入国在留管理局から受ける必要があります。

その際に、現在付与されている在留資格と、雇用側の企業との就労目的が異なっている場合、当然に在留期間の更新は不許可にされてしまいます。

そうなると、外国人の方を雇用することができなくなります。

また、上記のようになる可能性が高い場合、働く外国人の方も安心して仕事に打ち込むことができなくなります。

そのため、転職の際に、事前に「就労資格証明書」を取得しておくことで、雇用する企業の業務を行ってもらっても問題ないということを確認することができ、結果として、在留期間の更新が不許可にされるリスクを軽減でき、働く外国人の方も安心して仕事に打ち込むことができるようになります。

ただ、就労資格証明書は転職先企業で働くための許可証ではないため、在留期間の更新許可が100%保障されるというものではありません。

しかし、就労資格証明書を取得することで、更新の不許可のリスクを軽減することができるようになります。

メリット2 法令違反の防止(不法就労助長罪等の防止)

与えられた在留資格の範囲外の就労を行った場合、当該外国人の方は不法就労になります。
つまり、雇用する企業にとっても、不法就労者を雇用していることになってしまいます。

例えば、雇用する際に、外国人の方の在留カード等の確認を行ったために、不法就労者を雇用した場合は、「不法就労助長罪」等の罪に企業側も問われる可能性があります。

不法就労助長罪については、出入国管理及び難民認定法73条の2第1項1号に以下のように規定されています。

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

つまり、就労資格証明書を取得することで、外国人の方に付与されている在留資格でも可能であることが書面で可視化できるため(外国人の方が不法就労者ではないこの確認が可能)、不法就労助長罪に問われるリスクを下げることが可能になります。

メリット3 在留期間更新時に書類の簡素化

転職した場合、在留期間更新許可申請をする時には、在留資格を新規で取得した時のような、多くの書類が必要になります。

しかし、就労資格証明書を取得して、雇用先企業で就労することが問題ないとされている場合は、就労資格証明書交付申請の際に、既に提出している書類等もあるため、更新時の手続きを比較的スムーズに進めていくことが可能になります。

就労資格証明書を取得するデメリット

上記では就労資格証明書を取得するメリットを記載してきましたが、デメリットはあるのでしょうか。

当社では基本的に、転職する際には就労資格証明書を取得することをお勧めしているので、大きなデメリットはないと考えていますが、強いてデメリットを上げるとすれば以下のようなものがあります。

デメリット 手続きが煩雑で行政書士に依頼した場合に費用が必要

就労資格証明書を取得する場合は、在留資格を新規で取得する時のような書類が必要になります。
そのため、出入国在留管理局の審査も厳しくなるため、難易度が高くなります。

そうなると、自身では申請することができず、法務の専門家である行政書士に依頼することになりますが、当然そこには報酬が発生します。

つまり、デメリットとして、自身で申請することが難しいため、行政書士に依頼した場合の費用を上げることができます。

しかし、専門家に依頼することで、手続きも効率的に行うことができ、外国人の方を雇用した後の相談や更新等の手続きも依頼できるようになりますので、コンプライアンス違反にならないように、専門家に依頼するこをお勧めします。

就労資格証明書を申請するタイミングは?


転職する外国人の方が就労資格証明書を申請する時には大きく3つのタイミングがあると想定できます。

具体的には

1,在留期限まで6カ月未満(転職前と転職後で職務内容が同じケース)
2,在留期限が6カ月以上残っている(転職前と転職後で職務内容が同じケース)
3,転職前と転職後で在留資格の範囲外の業務に転職するケース

上記のようなケースが想定されます。

在留期限まで6カ月未満(転職前と転職後で職務内容が同じケース)

就労資格証明書の審査にかかる標準処理期間は1ヶ月~3カ月とされています。

そのため、在留期限が3カ月未満の場合、就労資格証明書を申請したとしても、審査が間に合わない可能性があります。

つまり、就労資格証明書の申請中に、在留期限満了が到来してしまうため、就労資格証明書の申請自体が無駄になってしまいます。

そうならないように、余裕をもって在留期限が6カ月を切っているようなケースでは、就労資格証明書の申請を行わず、「在留期間更新許可申請」を行う方向で検討することがベストです。
当然、「転職あり」の更新許可申請になるため、手続きの書類は多くなりますが、二度手間にならないように残りの在留期限には注意が必要です。

在留期限が6カ月以上残っている(転職前と転職後で職務内容が同じケース)

このケースの場合は、就労資格証明書を申請することをお勧めします。

仮に、就労資格証明書の交付申請を行い、就労不可とされた場合であっても、在留期限に余裕があるため、他の転職先等を検討する時間もあるため、別の対策を行うことができます。
また、上記メリットでも記載したとおり、雇用する企業にとっても不法就労者を雇用するリスクを低減することができます。

転職前と転職後で在留資格の範囲外の業務に転職するケース

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得している外国人の方が、別の在留資格が必要となる職種に転職する場合等が考えられます。

この場合は、在留資格自体が変わるため、就労資格証明書の申請ではなく、「在留資格変更許可申請」を行うことになります。

就労資格証明書申請の必要書類は?


外国人の方が転職時に行う、就労資格証明書の交付申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に行うことになります。

その際の必要書類については、以下に記載しておきます。

必要書類

1,就労資格証明書交付申請書
2,資格外活動許可書(交付を受けている場合)
3,在留カード又は特別永住者証明書
4,パスポート又は在留資格証明書
5,パスポート又は在留資格証明書を提示することができないときは、その理由を記載した理由書
6,身分を証する文書等(申請取次者が申請を提出する場合)

上記6つの書類が必要になります。

その他必要に応じて添付する資料

上記の書類以外にも、状況に応じて必要となる書類があります。

1,前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
2,前職の退職証明書
3,転職先の法人履歴事項全部証明書
4,転職先の直近年度の決算書の写し
5,転職先との雇用契約書の写し
6,雇用理由書
7,卒業証書の写し
8,最終学歴の成績証明書
9,転職先の情報が記載されているパンフレットや組織図

その他、状況に応じて必要な書類が求められます。

就労資格証明書は必ず必要?


就労資格証明書は必ず取得しなければならないというものではありません。
そのため、就労資格証明書がなければ外国人の方が就労活動をできないということはありません。

あくまでも、不法就労等にならないための事前確認をする制度であるということを知っておく必要があります。
しかし、就労資格証明書を取得するメリットは上述したとおりですので、取得しておくことをお勧めします。

転職した場合、入国管理局への届出も忘れずに


外国人の方が転職した場合、転職した時から14日以内に出入国在留管理局へ「所属(契約)機関変更の届出2」を行う必要があります。

こちらは義務ですので、転職する際は忘れないように必ず届出をしておく必要があります。

この届出を放置しておくと、次回の在留期間更新許可申請の際に、不利益を被る可能性がありますので、注意が必要です。

まとめ


今回は、外国人の方が転職する際に役立つ就労資格証明書(必要書類等)について考えてきました。

就労資格証明書を取得することで、転職する外国人の方、雇用する企業双方にメリットがありますので、有効に活用していくことをお勧めします。

しかし、就労資格証明書を提示しないことで、外国人の方に対して不利益な取り扱いをしてはいけないことも、出入国管理及び難民認定法19条で規定されているので注意注意が必要です。

外国人の方の雇用を検討している方は、法務の専門家である行政書士に相談することも選択肢として有効な方法です。

今回の記事が外国人の雇用を検討している方の参考になれば幸いです。

就労ビザについては以下の記事でも解説をしています。↓

関連記事

最近の記事

  1. 建設業許可(電気通信)工事担任者の資格について解説

  2. 介護分野の特定技能協議会の加入について

  3. 大阪で民泊許可をもらうために役立つエントリー

  4. 大阪で古物商の許可申請をする際に役立つエントリー

  5. 沖縄県で建設業許可申請をする時に役立つエントリー