大阪は国家戦略特別区域であるため、旅館業法に基づく旅館業許可以外にも国家戦略特別区域法に基づく、いわゆる「特区民泊」の許可も取得できることから、比較的宿泊事業を始めやすい環境にあります。
そのような環境であるため、一軒家を活用して民泊事業を始める事業者の方も多くいらっしゃいます。
一軒家の民泊は、ファミリー層にも人気があり、高単価が見込みやすいという理由で一軒家を活用して民泊を始めるビジネスが人気の要因であると考えられます。
そこで、今回は「一軒家で民泊許可」を取得する時に知っておきたいポイントについて解説をしていきます。
一軒家で民泊を始める方の参考になれば幸いです。
民泊については、以下の記事でも詳しく解説をしていますので参考にしてみてください。↓
2022.07.12
初めての方でもわかる!民泊許可の取得条件や種類について解説します
大阪等で旅行者を宿泊させる事業を行いたいと検討した時に、考えなければならないことは営業をするための許可を取得することができるのか?ということ...
一軒家の民泊許可は消防設備について確認すべき
一軒家で民泊事業を行う場合は、どのような消防設備が必要になるかの確認を必ず行う必要があります。
これは、一軒家で民泊許可を取得する時だけではなく、共同住宅等でも民泊許可を取得する時には必ず行っておくことをお勧めします。
理由としては、民泊事業を行うためには「消防法」に基づく消防設備を設置しなければなりません。
消防設備については、簡易なもので大丈夫なケースと、本格的な消防設備が必要なケースがあります。
もし、本格的な消防設備が必要になってしまった場合、自身が想定していた初期費用を大幅に超えてしまうケースが発生してしまうからです。
そのため、以下のポイントを必ず確認しなければなりません。
特定小規模施設に該当するかどうか
以下の条件に該当する場合、特定小規模施設として「自動火災報知設備」について簡易な自動火災報知設備の設置が可能になります。
特定小規模施設に該当するかどうかは、以下の2つ内、いずれかに該当する必要があります。
延べ床面積が300㎡未満で階数が2以下のもの
延べ床面積が300㎡未満で階数が2以下の一軒家の場合、自動火災報知設備を簡易な自動火災報知設備を使用して設置することが可能になります。
<参照:総務省消防庁・住宅宿泊協会(JAVR)のパンフレットより一部抜粋>
3階建ての場合
上記「特定小規模施設」については、2階以下のものでしたが、3階建ての場合でも以下の条件を全て満たせば「消防法令施行令第32条」の特例を適用することができ、簡易な自動火災報知設備を設置すれば良いとされます。
・地階を含む階数が3以下であること。
・建物の延べ面積が300m²未満であること。
・3階又は地階の宿泊室の床面積の合計が50m²以下であること。
・全ての宿泊室の出入口扉に施錠装置が設けられていないこと。
(ただし、非常時に自動的に開錠できるものや屋内から鍵等を使用せずに容易に開錠できるものなどを除く)
・全ての宿泊室の宿泊者を一つの契約により宿泊させるものであること。
(例:全ての宿泊者が同一グループ(一つの契約)であること。)
・階段部分には、煙感知器を垂直距離7.5m以下ごとに設置すること。
<参照:総務省消防庁・住宅宿泊協会(JAVR)のパンフレットより一部抜粋>
そのため、上記特例等が利用できる一軒家であれば、消防設備にかかる費用を大幅に抑えることが可能になります。
一軒家で民泊許可を取得する際に大きな障害になるのが、民泊許可を取得するために消防に関する設備に莫大な費用がかかることで、断念するケースが多くあります。
したがって、一軒家で民泊を始める場合には、自身の一軒家が特例等の適用が可能かどうか確認しておくと、想定外に出費を避けることができます。
特定小規模施設用自動火災報知設備とは
上記で記載した簡易な自動火災報知設備のことを「特定小規模施設用自動火災報知設備」と言います。
この「特定小規模施設用自動火災報知設備」とは、通常の自動火災報知設備のように「受信機」「感知器」「音響装置」等を設置して配線で接続する方式の設備です。
また、以下の特徴を有する無線式の連動型警報器付感知器を設置する方法もあります。
●電池式の感知器は、電源の配線工事が不要。
●感知器同士が無線通信を行うものは、感知器間の配線工事が不要。
●感知器自体が警報音を発するため、音響装置の設置が不要。
●全ての感知器が連動して警報音を発する場合、受信機の設置が不要。
●受信機や中継器を設置せず、感知器のみの場合、工事には消防設備士の資格が不要で、工
事に着手する前の届出も不要。(設置工事完了後の届出は必要。)
※市町村等の火災予防条例によっては、届出が必要となる場合があります。
一軒家の民泊で必要な消防設備は?
上述したとおり、一軒家で民泊許可を取得するためには消防設備を設置しなければなりません。
一軒家で民泊を行う場合に、消防法令上求められる必須事項は以下の事項です。
自動火災報知設備の設置
上述したとおり、「特定小規模施設」に該当するようなケースでは、簡易な自動火災報知設備の設置で問題ありません。
しかし、建物の延べ面積が300㎡を超えてしまう等のケースでは、通常の自動火災報知設備の設置が必要になるので、注意が必要です。
誘導灯の設置
誘導灯の設置が必要になります。
ただし、建物に不案内な(避難経路がわからない)方でも、避難口までの避難経路が明確にわかるなど避難に支障が生じない場合は、誘導灯の設置を免除することが可能です。
誘導灯の設置が免除されるのは以下のケースです。
誘導灯の設置が免除されるケース①
以下の全ての要件に適合する避難階(1階)
(1)以下のいずれかに該当すること。
ア.各居室から直接外部に容易に避難できること。
イ.各居室から廊下に出れば、簡明な経路により容易に避難口へ到達できること。
(2)建物の外に避難した者が、当該建物の開口部から3m以内の部分を通らずに安全な場所へ避難できること。
(3)利用者に対して避難口等の案内を行うことや、見やすい位置に避難経路図を掲示すること等により、容易に避難口の位置を理解できる措置を講じること。
誘導灯の設置が免除されるケース②
(1)各居室から廊下に出れば、簡明な経路により容易に階段へ到達できること。
(2)廊下等に非常用照明装置を設置すること又は常時容易に使用できるように居室に携帯用照明器具を設置すること等により、夜間の停電時等においても避難経路を視認できること。
(3)上記免除されるケース①の(3)の要件を満たしていること
なお、ここで言われている「簡明な経路」とは、避難経路が分からない方が夜間でも迷うことなく避難口に至ることができる避難経路のことをいいます。
防炎物品の使用
カーテン、じゅうたんなどを用いる場合は、防炎性能(火災の発生防止、延焼拡大の抑制など)を有する防炎物品を使用しなければなりません。
なお、防炎物品かどうかの判断は、見た目ではわからないため「消防法施行規則」によって防炎表示付ける義務があります。
防炎表示については、消防庁から以下のように公表されています。
<参照:消防庁 防炎の知識と実際より一部抜粋>
消防用設備等の点検報告
消火器や自動火災報知設備などの消防用設備等が火災時にその機能を発揮することができるよう、防火対象物の関係者に対し、定期的な点検の実施と、その結果の消防長又は消防署長への報告を義務づけられています。
そのため、以下の点検を行い、報告する必要があります。
機器点検
外観確認や簡易操作により判別できる事項についてのみ行う点検を6カ月に1回実施
総合点検
消防用設備等を実際に作動させること等により総合的な機能の確認を行う点検を1年に1回実施
上記点検を行い、1年に1回、点検結果を消防長又は消防署長に報告しなければなりません。
消火器の設置も必要になることも
次のいずれかに当てはまる場合、消火器の設置が必要です。
●建物の延べ面積が150m²以上のもの
●地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50m²以上のもの
<参照:総務省消防庁・住宅宿泊協会(JAVRのパンフレットより一部抜粋>
消防法令適合通知書も必ず必要
特区民泊の許可等を取得するためには、上記の消防設備を備付け、管轄の消防署の立会検査を受けた上で、消防法令適合通知書を発行してもらう必要があります。
消防法令適合通知書の取得までの流れ
消防法令適合通知書の取得までの大まかな流れは以下のとおりです。
消防法令適合通知書の交付申請
管轄の消防署へ所定の様式により、交付申請を行います。
消防法令適合状況の調査
管轄消防署により、立入検査等を実施し、消防法令への適合状況について調査します。
消防法令適合通知書の交付
調査の結果に基づき、消防法令に適合していると認められる場合は、「消防法令適合通知書」が交付されます。
<参照:総務省消防庁・住宅宿泊協会(JAVRのパンフレットより一部抜粋>
まとめ
今回は、一軒家で民泊許可を取得する際に必要になる消防設備について考えてきました。
民泊許可は消防設備以外にも、近隣住民への説明や、環境局への届出等、様々な手続きが必要になります。
効率的に民泊許可を取得するには専門家である行政書士に相談する方法も有効な選択肢ですので、ぜひ一度相談してみてください。
今回の記事が一軒家で民泊許可の取得を検討している方の参考になれば幸いです。
当事務所の民泊許可の実績については、以下の記事を参考にしてください。↓
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