行政書士は、多様性に触れるとても面白い仕事。
どんな方にもフラットに、“法”をわかりやすくお伝えします
行政書士法人 Zip国際法務事務所
代表 綿谷俊彦
法律に関する相談をするとき、「こんなことで相談をしてもいいのだろうか……」と気後れしてしまう人も少なくありません。
依頼者の気持ちに寄り添い、“法”をわかりやすく伝えることをモットーとしているZip国際法務事務所。代表・綿谷さんは、「何かあったらまずは僕に相談してみてください」とお客様に伝えているといいます。
行政書士は街の身近な法律家。綿谷さんにとって、行政書士の仕事とは?
(文:コマツマヨ)
どんな方にもフラットに。
リスクもデメリットも踏まえて、わかりやすく法律をお伝えします
相続の手続きや遺言書作成、会社設立、内容証明、各種許認可申請と、幅広い案件に対応するZip国際法務事務所。なかでも、綿谷さんが得意とするのは、外国人の在留資格の申請や帰化申請です。
「日本でお仕事をされる方やこれから起業される方、日本人と結婚される方などの在留資格の申請や更新のご相談が中心です。コロナ禍で新規の申請は少なくなりましたが、留学やお仕事で日本に住み続けておられる外国人はたくさんいらっしゃいますので、そういった方々に変わって取次者として申請を行います」
外国人の在留資格は、なぜ日本に滞在する必要があるのかという具体的な理由を書類に書き、法律上の条件を満たしているということを行政側に証明しなければなりません。安易な書き方や自己申請ではこちらの思いが正しく伝わらず、申請が通らないこともあるそう。
「申請を通すためにその場しのぎの内容を書くこともできますが、嘘はもちろんダメですし、あとから申請を取り消されてしまうようなことがあってはいけません。日本で長く安定して働いていただきたいので、リスクもきちんと説明した上で、どんな方にもフラットにわかりやすくお伝えするようにしています」
Zip国際法務事務所では、費用に対してもフラット。どの作業にどれだけ費用がかかっているか、内訳を細かく提示し、業界の相場に合わせた一律の料金設定にしています。
「場合によっては他社より高いお見積もりになることもあるかもしれませんが、絶対に省くことの出来ない手間が含まれていることを理解してもらった上で、ご納得いただいてからお話を進めています。格安で仕事を受けてくれる行政書士事務所はたくさんあると思いますが、お客様の人生や事業に関わる責任がある以上、適正な金額を請求することがお互いにとって大切なことだと考えています」
大学卒業後は一般企業へ。
学習塾を運営しながら、作曲の仕事も!
もともと、独立して1人でお金を稼いでいきたいという思いが強かったという綿谷さん。大学で法律を学んだものの、卒業後は一般企業に就職。学習塾の管理・運営の仕事に就きます。
「学習塾まるまる一つを任され、講師の採用から授業のスケジュール管理、入塾の説明や保護者の対応、集客、売り上げ管理など、運営に関することは全て経験しました」
当時の経験で身についたのが、生徒さんや保護者への話し方や伝え方。行政書士となった今も、この時の経験は大いに活きているそうです。
「僕のお客様のなかには日本語が流暢な外国人の方もいらっしゃいますが、まだまだ日常会話にも苦戦されている方がほとんどです。
法律を絡めた話をする際に、内容をきちんと理解されていなかったりお互いの認識にズレがあるまま話を進めてしまっては、彼らの今後の人生に大きな影響を及ぼしてしまう恐れもあります。日本語で一方的に説明をするのではなく、内容をきちんと理解できているか、こちらの意図が伝わっているかをこまめに確認し、表情や様子に注意しながら話を進めるようにしています」
そんな綿谷さんに趣味を尋ねてみたところ、「今は仕事が趣味みたいなものですかねぇ」との答えが。しかし、詳しくお話を伺うと意外な答えが返ってきました!
「学生時代はバンドを組んで、僕はベースを担当していました。その延長で音楽教室に通っていたのですが、そこの先生から作曲の仕事を手伝って欲しいと声をかけていただき、学業と並行して作曲の仕事もしましたね。いわゆるDTM(デスクトップミュージックの略。ソフトを用いて楽曲制作を行うこと)を、4年間で50曲ほど作りました。
作った曲は商業施設のBGMやご当地アイドルの楽曲として使われました。当時は音楽で食べて行けたらいいなぁなんて考えていましたが、心のどこかで『いつかは法の世界に戻りたい』という思いもあり、行政書士の仕事で独立するという目標が立ったところでスパッと音楽はやめました。『次の目標が立ったから音楽はもういいや』という感じで(笑)」
「飽きやすい性格なので……」と謙遜しながら笑う綿谷さんですが、 もし音楽を続けていれば、そちらの道でも才能も開花していたかも……?
平成29年に行政書士法人を設立。
個人事業主が90%以上の業界で、法人化を決意した理由とは?
一般的に士業の方は、資格取得後は法律事務所に就職し、実務経験を重ねてから独立をします。綿谷さんも行政書士事務所で実務の勉強をしたのち独立をしましたが、行政書士の業界ではそういった人の方がごく僅かなのだとか。
「行政書士の90%以上が個人事業主。そのため、他の士業に比べてそもそもの求人が少ない。多くの人は資格取得後に即独立し、経験が追いつかないまま仕事をせざるを得ません。実績がないため低価格で勝負するしかなかったり、いつまでたっても特定のジャンルしか対応できないなど、負のスパイラルに陥っている人も少なくないのが現状です」
そんななか、Zip国際法務事務所は平成29年に法人化。90%以上が個人事業主という業界で、綿谷さんが会社として事業を展開していくことを決意したのはなぜだったのでしょうか。
「法人化した理由の一つが、永続性を担保できるということです。個人事業主だと行政書士はひとり。もし廃業することになったり何らかの理由で仕事を続けられなくなったりしたら、お客様は別の行政書士を探さなければいけません。
日本語に苦戦されている外国人の方だと負担も大きいですし、行政書士が見つからないまま在留資格の期限が過ぎてしまうと不法滞在となってしまいます。自分のお客様に、そんなリスクを負わせたくない。会社として複数の行政書士が所属することで万が一のときには別の行政書士に引き継ぐこともできますので、お客様の負担も軽減できると考えたからです」
文化の違いに驚くことがたくさん!
多様性に触れる行政書士の仕事は、本当に面白い
外国人の方々と接する機会が多い綿谷さんですが、ときどき日本との文化の違いに驚くこともあるようです。
「ある部族出身の方は日本に来るまで靴を履いたことがなかったそうです。靴を履くことがいかに安全なことか、怪我をしないことがいかに重要であるかを日本に来て初めて知ったとおっしゃっていました。
また、日本よりはるかに暑い国で生まれ育った男性は日本で暮らすうちにクーラーの快適さに慣れてしまい、母国に帰ると寝られなくなってしまったそうです。『クーラーのない生活なんてもう考えられない!』と再び来日され、日本で一生暮らしていきたいとおっしゃっていました。いろんな国の方々と仕事をしていなければこのような多様性に触れることはなかったと思うので、行政書士は本当に面白い仕事ですね」
日本のように制度が整っている国ばかりではありません。ときには、申請に必要な書類が揃えられないといったことも……。
「行政サービスが十分に整っておらず、証明書など公的な書類を発行することが難しいケースもあります。証明書がないと在留資格の申請ができないので、関連する書類を可能な限り集めてもらい、それに加えてご家族に直筆でお手紙を書いてもらうなどで身元を証明し、行政にも事情を説明して申請したこともありました」
こうしたやイレギュラーなケースに柔軟に対応できるのは、綿谷さんの経験の成せる技。
「この仕事をしていると予定通りに事が進まないことは山のようにあります。行政書士の仕事は“経験がものをいう仕事”だと日々感じますね」
現在、行政書士試験専門の家庭教師としても活動している綿谷さん。近年の行政書士試験は独学で合格することは非常に難しく、合格者の多くは予備校や専門学校に通っています。しかし、人数の多い予備校ではわからないところを質問することができず、授業についていけなる人も多いといいます。
「結果的に行政書士になるという夢を諦めてしまった人を沢山見てきました。同じ行政書士を志した者として、せっかくの目標を無駄にして欲しくないんです。個人指導の家庭教師なら、わからないところはその場で解消できますし、弱点を指摘してあげて苦手な部分を重点的に指導することもできます」
初めてチャレンジする人から再受験する方までそれぞれに合わせた学習計画を立てて指導を行うのが綿谷さん流。試験までに効率よく勉強できるので、時間を無駄にすることがありません。また、現役の行政書士として合格後の相談や独立のアドバイスができることもメリットです。
「一人ひとりの質が向上することで、行政書士業界全体の質が上がり、行政書士という仕事の社会的価値が向上すればいいなと思っています」
何かあったら、まず僕に。
お困りごとを気軽に相談できる最初の窓口になりたい
「当社は会社設立のご相談を受けることも多いのですが、更新手続きや新企業の立ち上げなどで、お客様と定期的にお付き合いをさせていただきます。会社が成長し、社員さんの数が増え、新たな事業も始められて……と、会社の成長を見続けられるのが嬉しいですね。外国人の方なら、来日後すぐからお付き合いが始まり、やがて結婚されてお子さんも生まれて、今度は奥さんやお子さんの在留許可もお手伝いさせていただけるなど、ご家族の人生まで見守ることができます。とても貴重な経験をさせてもらっていますね」
日本人、外国人に関わらず、初めてのことは誰に聞けばいいかわからないし、何をすればいいかもわからないもの。「困ったことがあれば気軽に相談できる最初の窓口になれれば」と、綿谷さんはいいます。
「入り口は許可や申請の書類作成ですが、それに伴ってやらなければならないことはたくさんあります。法律はあくまでもお客様の想いや希望を実現するための手段のひとつ。困りごとを解決するだけでなく、より快適にスムーズに生きていくために法律を上手に活用していただきたいと思っています。だからお客様には、『何かあったら、まずは僕に相談してください』とお伝えしています。
この仕事を通してさまざまな業種の企業様、経営者様とのつながりができました。僕で対応できることなら対応させていただきますし、登記のご相談なら司法書士、裁判が必要になるなら弁護士、会計のことなら会計士、人事関係なら社労士、事務所をお探しなら不動産業者など、必要に応じて必要な人をご紹介することができます」
「この仕事の難しいところは、ゴールがみんな同じであること。申請を通すだけなら僕じゃなくてもできる。だから差別化が難しいんです。お客様に安心して頼っていただける行政書士であり続けるためには、“人”がなによりも大切。だから僕は、僕自身が商品だと思っています。法律のことは分かりにくいし硬い話ですが、僕のところに来てもらったら難しい専門用語は使わず分かりやすく説明させていただきますし、『こんなことで相談してもいいのかな……』と心配される必要もありません。“法をわかりやすく伝える”ことが当社のモットー。気軽に相談してもらえれば、きっとお力になれると思います」